品川区で楽しむレコード店・カフェバー
地元で長く親しまれてきたCD・レコードの名物店から、新しく地域にオープンしたカフェ&レコードショップ、日替わり店長によるミュージックバー、ロック・ブルースやソウルを聴きながらお酒や食事を楽しめるお店まで。品川区内でおすすめのレコード店・カフェバー5店を紹介します。(2023.07.29)
1. 品川区内のお店で、お気に入りの一曲を探してみませんか?
人々の心を癒やす音楽。たまたま立ち寄ったお店で流れていた1曲に心を奪われることも。
今回はそんなお気に入りの音楽が見つかるかもしれない、品川区のレコード店・カフェバー5店をご紹介。それぞれのお店には「おすすめの音楽」も伺いました。
品川区内を散歩して、新しい音楽や人との出会いを楽しんでみませんか?
2. 今年で42周年、駅前のCD&レコードショップ「ペット・サウンズ・レコード」(武蔵小山)
最初にご紹介するのは、東急目黒線・武蔵小山駅前にあるCD・レコード店「ペット・サウンズ・レコード」。1981年に創業し、2023年で42周年を迎えた老舗です。お店は森勉さんと息子の森陽馬さんご家族、スタッフで営業されています。
店名はビーチ・ボーイズの名盤『Pet Sounds』にちなみ、来店したお客さんが自分のお気に入りの音(=Pet Sounds)を見つけるお手伝いができればとの思いが込められているそう。
お店では新品を中心にCDとレコードを販売しています。メジャーアーティストからインディーズまで幅広くラインナップ。手書きのポップで聴きどころや魅力が丁寧におすすめされていて、手に取りやすくなっています。
店内奥の一角にはレコードコーナーも。陽馬さんは「最近は若い人がよくレコードを買っていきます。近頃は、新譜や再発(リイシュー)盤など、新品のレコードがこんなに発売されているのを知ってもらいたいです」と話してくれました。
取材当日、店内で流れていたのはバンド・冬にわかれての『flow』でした。透き通った歌声と叙情的な歌詞が魅力の1枚。インタビューリーフレットなど、ペット・サウンズ・レコードでしか手に入らない限定特典も付いてくるそう。
店内にはシティポップの第一人者、山下達郎が1970年代に率いていたバンド「シュガー・ベイブ」のメンバーのサインも。店長の勉さんが親しい友人から貸してもらったものだそう。「非常に珍しいもの。サインの文体に注目するとまた味わい深い」と話してくれました。
店舗でCD・レコードを購入するとお店オリジナルのリーフレットがついてくるのも特徴です。過去のライブや名盤の解説など、音楽愛にあふれたコンテンツが盛りだくさんで読み応え抜群。
お店の公式サイトでは、店員の独断と偏見で選んだ“今日のおすすめの1曲 ”を更新中。2004年から毎日欠かさず紹介し続け、なんと今年2023年で19年目に突入したそう!
2019年には自主レーベルも発足し、CD・レコードショップに留まらず音楽活動の幅を広げています。
おふたりに、それぞれおすすめの1枚を持っていただきました。勉さんはキャロル・キング『Tapestry』、陽馬さんはビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』。
「音楽は生活必需品ではないけど、生活の中に音楽があると毎日がとても豊かになる」と陽馬さん。「音楽に普段から親しむ人はもちろん、あまり音楽に詳しくない人たちがお気に入りの1枚に出会うお手伝いができれば」と話してくれました。
街角にたたずむちょっと変わったCD・レコードショップ。お気に入りの1枚を探しに訪れてみては。
ペット・サウンズ・レコード ・住所 〒142-0062 東京都品川区小山3-27-3 ペットサウンズビル1F ・電話番号 03-3787-0818 ・営業時間 11:00〜21:00 ・定休日 年中無休 ・URL https://www.petsounds.co.jp/
3. 聴きたい曲を付箋に書きつけリクエスト、ミュージックバー「ロジウラ」(荏原町)
お次に紹介するのは東急大井町線・荏原町駅から徒歩3分、立会川緑道沿いにお店を構えるバー「ロジウラ」。2022年9月のオープン以来、20代から60代まで地元の方に広く親しまれています。
店内はカウンターメインで、レコードに囲まれた空間です。スピーカーとターンテーブルもそろえているので、お酒を飲みながら上質な音を楽しむことができます。
ロジウラでは、さまざまなメンバーが日替わりで店に立ちます。この日のスタッフは「訪れる日によってお店の雰囲気がガラリと変わるのも楽しんでほしい」と話してくれました。
お店のスタッフの友人が参加しているというおすすめのレコードを紹介いただきました。インストゥルメンタル(歌がなく楽器のみで演奏する)ユニットとして東京を拠点に活動するof Tropique(オブ・トロピーク)の『Buster Goes West』。南国のファンクな雰囲気を持ちつつ、さまざまなジャンルが入り混じった多国籍な音が特徴的な1枚。
店でかけたい音楽があれば、その場で付箋に書いてリクエストするスタイルです。フランク・シナトラから吉田拓郎までさまざま。付箋それぞれに思い出が滲んでいますね。好きなレコードやCDを持ってきてかける人もいるそう。
ドリンクは「ビール」(600円)、「ハイボール」(500円)など定番のものから、季節のカクテル(時価)など幅広く用意。ノーチャージで楽しめます。
「お客さんが聴きたい曲をオールジャンルで流すスタイルなので、音楽好きでもそうでなくても気兼ねなく来てほしいです。お客さん同士で仲良くなりやすいので、肩肘張らず雰囲気を楽しんでもらえれば」と話す、この日の店主さん。今後は中古レコードなどの販売も検討しているそう。
好きな曲をリクエストして飲む一杯は格別。懐かしい音楽の思い出話に花を咲かせ、荏原町の夜が更けていきます。
ロジウラ ・住所 〒142-0053 東京都品川区中延5-6-12 ・営業時間 19:00〜24:00 ・定休日 日曜 ・URL https://www.instagram.com/rojiura_ebaramachi/
4. 国内外のアンビエント・ミュージックと出会えるカフェ&レコード「春の雨」(中延)
東急大井町線・中延駅から徒歩5分ほど、住宅地の一角に店舗を構える「春の雨」。2022年11月にオープンした、カフェ併設のアンビエントレコード専門店です。
「アンビエントは環境音楽とも呼ばれ、生活動線の中にある音楽だと考えています。街の空気や人々の生活に馴染む美しいアンビエントミュージックを多くの皆さんに楽しんでもらえたら」と店主の中澤敬さん。元は会社員で、「こういうお店があったらいいな」という自身の理想を形にしたのだそう。
中澤さんは坂本龍一の音楽が好きで、店名は坂本龍一とクリスチャン・フェネスによる共作アルバム『cendre』の収録曲「haru」にちなんで名付けたのだとか。
お店に入ると壁面にはレコードがずらり。海外レーベルがほとんどで、レーベルとコンタクトを取って直接買い付けたものも。
この日、店内で見つけたのは、限定盤のカラーヴァイナルとしてレコード本体が透明な紫に仕上げられたKhotin (コーティン)『Finds You Well』や、キース・ジャレット の2枚組ライブアルバム『THE KOLN CONCERT』など。「中には世界に200枚しかない珍しいものもあります」と中澤さん。ミュージシャン・やけのはらさんセレクトの中古レコード販売の棚も。
店内にはカウンターとテーブル席を備え、内装デザインは戸越の建築設計事務所spread it(スプレッド イット)、店内の棚や椅子などは戸越銀座の工房・瀬尾商店が手がけています。
レコードラックのそばに、ドリンクを置くことができる小さなテーブルを備えているのもこだわりのひとつ。美しいジャケットを眺めながらドリンクやフードを楽しめます。
カフェメニューはコーヒーやフルーツティー、アルコールメニュー、子どもでも安心して食べられる国産素材を使った手作りのお菓子などを用意。
旗の台に本店を持つ「コンパスコーヒー」から仕入れたオリジナルブレンドの「アイスコーヒー」(470円) はキリッとした苦味が気分をリフレッシュさせてくれます。「自家栽培人参のキャロットケーキ」(450円)はしっとり柔らかでやさしい甘さ。
アルコールメニューはクラフトビールやクラフトジン、ワインなどをそろえます。
「月替わりで用意しているクラフトビールは味ももちろんですが、特にジャケットが秀逸なものを選んで仕入れています」(中澤さん)
取材時にいただいたのは奈良醸造の「PHILHARMONY」(1,600円)。奈良産の柑橘・大和橘(やまとたちばな)の酸味とコリアンダーシードなどのスパイスが合わさり、飲みやすくも複雑な余韻を残します。
中澤さんおすすめのレコードは、ダニー・スコット・レーン 『Wave To Mikey』 。
「直接レーベルから仕入れたものです。洗練されたアートワークも秀逸ながら、アンビエントとジャズのエッセンスが組み合わさり、静かな都市を連想させるモダンな音楽です」と中澤さん。
「アンビエントミュージックは聴き始めるハードルが高いと思われがちですが、そんなイメージを取り払えるよう、皆さんに身近なお店でありたいと思っています」と中澤さん。「コーヒーを飲みに立ち寄るくらい、本当に気軽に来てもらえたら。好みに応じて音楽のおすすめもしていますよ」と笑顔を見せます。
レコードはオンラインショップでも販売中。「春の雨」がアンビエント・ミュージックとの新しい出会いの場になってくれるはずです。
春の雨 ・住所 〒142-0042 東京都品川区豊町 6- 5-1 ・営業時間・定休日 公式サイト、Instagramで告知 ・URL https://harunoame.com/
5. ブルースやオールドロックに浸れるバー「Whisk(e)y&Old music BAR Oh!Baby」(不動前)
東急目黒線・不動前駅から徒歩5分、「Whisk(e)y&Old music BAR Oh!Baby(オー ベイベー)」は、1930年代〜1975年までのオールドミュージックをコンセプトにしたウイスキー専門のバーです。
2022年12月、桐ヶ谷通り沿いにオープンした同店。ラーメン店「きりきり舞」2階にあり、らせん階段が目印です。
店内はカウンターとテーブル席を用意。ワインレッドとティールグリーンの色使いで、レトロながらスタイリッシュな空間を演出しています。
店主の小林誠さんは元銀行員。55歳で銀行を辞め、趣味の音楽とお酒を全力で楽しむべく開店に踏み切ったそう。自らの好きなものがたっぷり詰まった空間に、「もう自分の趣味の部屋ですね」と小林さん。
不動前エリアの40代以上の方が多く来店するほか、熱狂的な音楽ファンの若者もいるのだとか。
店名は小林さんが中学生の頃から大ファンだというRCサクセションの楽曲『Oh!Baby』にちなんでいるそう。その元ネタであるリトル・ウォルター『Tampa Red』のレコードが壁に飾られていました。
店内にはCDとレコード合わせて800枚以上が並びますが、「自宅にはまだ2000枚以上あるんです」とはにかむ小林さん。
店名の「Whisk(e)y」は、スコッチウイスキー(Whisky)とアイリッシュウイスキー(Whiskey)の表記の違いにちなんだもの。お酒はウイスキーを中心に、アイラ系からジャパニーズまで80種類以上をそろえています。1杯1,000円〜2,000円で、気になる銘柄を気軽に試すことができます。ワインやクラフトビール、焼酎、オリジナルカクテルの用意も。
ウイスキーを提供する際のこだわりとして、ストレートのグラスとロックグラスを用意。小林さんは自身の経験から「最初にストレートで香りと風味を楽しみ、それからロックで味わったほうがよりお酒の特徴がわかるのではないか」と考え、このような提供スタイルにしているのだとか。
また、お店を訪れて最初にウイスキーを飲む人には、胃に負担をかけないようコンソメスープをふるまっているそう。小林さんの「こうだったらもっと楽しめるのでは」といった細やかな思いやりが随所に詰まっています。
小林さんのおすすめCDは小出斉『Walking Alone with The Blues』。「日本を代表するブルースマスターによる、初の弾き語りソロアルバムです。渋い歌声が大好きで、お店でもしょっちゅうかけています」と魅力を語ってくれました。
「オールドミュージックが好きな方や、ブルースが気になる若い人までいろんな人に気軽に来てほしいですね」と小林さん。「入りにくい店構えかもしれませんが、気負わずTシャツで来られる店です。おいしいウイスキーと音楽でくつろいでもらえれば」と呼びかけます。
小林さんの気さくで軽快なトークと骨太なオールドミュージックが楽しめる「Oh!Baby」。オールドミュージックとウイスキーを深く知る第一歩を踏み出せるお店です。
Whisk(e)y&Old music BAR Oh!Baby
・住所 〒142-0061 東京都品川区小山台1−33−11 ・電話番号 090-6497-0894 ・営業時間 19:00〜24:00 ・定休日 日曜・祝日 ・URL https://twitter.com/zery0007
6. ソウルミュージックが流れる五反田の止まり木「Soul Music BAR Ali-Ollie!!!」(五反田)
最後に紹介するのは五反田の「Soul Music BAR Ali-Ollie!!!(ソウルミュージックバー・アリオリ)」です。JR・五反田駅東口から徒歩2分、ソニー通り沿いのビル3階にあります。
2005年に恵比寿で開業し、2017年に五反田に移転した同店。1960年〜80年代のソウルミュージックを中心に選曲し、アナログレコードをかけるのがこだわり。
店内は赤を基調としたオールドスタイル。カウンターメインでテーブル席を備えます。店主の小野田淳夫さんは「恵比寿で営業していたときの雰囲気を残しつつ、昔のスナックっぽさを演出しています。エレベータが開くとすぐお店だというところを気に入ってくださる方も多いです」と話してくれました。
カウンター奥には小野田さんが敬愛するソウルシンガーで、店名の由来にもなったアリ・オリ・ウッドソンのサインも。恵比寿で営業していたときに壁にサインしてもらったものを、切り抜いて持ってきたのだそう。
「恵比寿の店にはご本人にも何度か訪れていただいてうれしかったですね」(小野田さん)
お酒はウイスキーをメインに、バーボンからスコッチ、アイリッシュなど70種類以上を用意。そのほかテキーラやラムなど、お客さんの好みに合わせて取りそろえています。
そんな小野田さんおすすめの1枚はテンプテーションズ『To Be Continued』。
「テンプテーションズの第3の黄金期といえる、アリオリさんリードヴォーカルの80年代を代表する、’86通算36枚目のアルバムです。もともとシャウト系のアップナンバーでの歌いっぷりに定評がありましたが、本作収録の『Lady Soul』と『Someone』というバラッドにおける深い表現力を持つ曲で、正統派ソウルシンガーとしての評価を広く獲得したんです」(小野田さん)
おすすめウイスキーの「グレンスコシア ダブルカスク」(1,400円)はキャラメルのような香ばしさと甘みがあり、スパイシーでリッチな味わい。
小野田さんは「実はあまり言ってなかったんですが」と前置きし、「30mlのショットサイズで提供する店が多い中、当店では相場料金のままジガーサイズ=45mlでお出ししています。そのほうが長く楽しめますし、お店の雰囲気をしっかり味わってもらいたいので」とこだわりについて話してくれました。これはうれしい!
オリジナルカクテルの「ラムゼイ・ルイス」(1,200円)は、『Sun Goddess』 などで知られるジャズピアニスト、ラムゼイ・ルイスの名前にちなんでいます。ラムベースの甘く爽やかな飲み口で、ミントの香りで清涼感もあり太陽の真下で飲みたいカクテル。
お店の名物「横手やきそば」(950円)は、秋田県横手市出身のスタッフにちなんでラインナップする人気メニュー。麺やソースは現地から取り寄せる本格派で、食べ応えがありながらあっさりした味わい。
スパイシーなソースが意外にもウイスキーに合い、なかなかどうして、思わぬペアリングでした。バーで本格的な焼きそばをいただけるのもなんだか不思議な感じ……。
他には「ミックスナッツ」(650円)や「ビーフジャーキー」(750円)といった定番おつまみから、トルティーヤ生地でパリパリ食感が特徴の「トマトソースとチーズのピザ」(850円)なども。チャージ=700円。※金額は取材時の金額です
生活に寄り添う「Soul Music BAR Ali-Ollie!!!」。ソウル・ミュージックってなんだろうと思った方はぜひお店へ。
・住所 〒141-0022 東京都品川区東五反田1-21-12 フリーゼ五反田 3階 ・電話番号 03-6277-4418 ・営業時間 18:00〜23:30 ・定休日 日曜日 ・URL https://barali-ollie.com/
品川区のレコードショップとカフェバーを5店紹介しました。さまざまな音楽ジャンルやスタイルのお店があり、どれも違った世界が広がっています。きっとあなたのお気に入りの音楽が見つかるはずです。
※記事中の店舗情報は2023年7月上旬の内容です。店舗の営業時間、提供内容は変更となる場合がありますのでご了承ください。
(取材:神田匠 編集:森夏紀/ノオト)
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