世代を越えて楽しめる品川区の駄菓子屋

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荏原中延駅, 戸越駅, 新馬場駅

子どものころ、お小遣いを握りしめてワクワクしながら駄菓子屋さんに入った思い出はありませんか? 思わず誰もが童心にかえってしまう駄菓子屋さん。今もなお、地域の方にとって癒やしの空間になっています。

今回は品川区にある駄菓子屋さんをご紹介。子どもから大人まで地域に愛されている駄菓子屋さんで、懐かしさに触れながら、いつもとは少し違った楽しみを見つけてみませんか?(2021.11.02)

  1. 駄菓子と一緒に、豆菓子とソフトクリームもいかが? 「遠州屋 横原商店」(荏原中延)

  2. 最初に紹介するのは、東急池上線荏原中延駅から徒歩約3分、看板にある「豆」の文字が一際目立つ「遠州屋 横原商店」。駄菓子をはじめ、豆菓子やソフトクリームなどを販売するお店です。

    1969(昭和44)年頃の店舗の様子(提供=「遠州屋 横原商店」)

    オープンから60年を超えた横原商店。先代のご主人が経営していたころは、豆菓子の卸販売、小売、製造を中心に行っていたそう。2017年に先代の次男である横原邦彦さんが継ぎ、お店を今の姿へとリニューアル。それから駄菓子やソフトクリームの販売も開始しました。

    店内には、商品がびっしりと綺麗に並んでいます。非常に明るく、清潔感を感じられる空間作りです。

    「先代のときから通ってくださるお客さんのためにも、豆菓子は残したいと思っていました。落花生は千葉県八街の『遠藤ピーナツ』、大豆商品は北海道旭川の『共成製菓旭豆本舗』から仕入れています。子どもが駄菓子を見ている間に、親御さんは豆菓子を選ぶ。同じ空間に親子が一緒にいられるお店を目指しました」と横原さん。

    もう一つの看板商品はソフトクリーム。月曜から水曜は「北海道バニラ」(200円)、木曜から土曜は「季節のフレーバーソフトクリーム」を販売中です。

    取材時、季節のフレーバーは「ミルクティーソフト」(260円)でした。スリランカ産の茶葉を混ぜて発酵しているので、本格的な味わいになるそう。

    また、職業体験として、近隣にある延山小学校の3年生がお店の開店準備などをお手伝いすることも。横原さんは、そのお礼として届く手紙や運動会の招待状を大切に取っているそう。地域との繋がりを大事にしているのが伺えますね。

    「実は、いつかこの店でジェラートを販売するのが僕の夢なんです。早く夢を実現するために、もっと売上があがるよう頑張らないといけませんね」

    茶目っ気たっぷりに野望を語ってくれた横原さん。これからの展開もますます楽しみな「遠州屋 横原商店」で、豆菓子と一緒に懐かしい駄菓子を選んでみては?

    遠州屋 横原商店
    ・住所 東京都品川区中延2-6-24
    ・電話番号 03-3781-9898
    ・営業時間/定休日 10:00〜19:00/日曜日

  3. 品川宿の歴史を感じながら無料のお休み処でちょっと休憩 「またあした」(北品川)

  4. 京浜急行線新馬場駅の北口から徒歩約5分。観光案内や無料のお休み処などの役割もある品川宿交流館の1階スペースにあるのが、駄菓子屋「またあした」です。

    「ずっと雑貨屋をやっていましたが、子どもが巣立ち、夫に先立たれてから気力がなくなってしまい、少し休憩をしていました。それから『駄菓子屋をやってみたい』と周りに言っていたら、旧東海道品川宿周辺まちづくり協議会から声が掛かったんです」と話すのは店番の佐藤成子さん。

    その後、2004年に品川区立品海公園の近くで駄菓子屋をオープン。2011年に、現在の品川宿交流館内にお店を移転しました。

    「子どもが大好きなのよ」と話す佐藤さん

    「足し算で駄菓子の金額を計算していた子が3年生になって掛け算で計算するようになったり、大人になって子どもを連れて『おばさん、覚えてる?』と訪ねてきてくれたり。いろんな子どもたちが成長する姿を見られるのが本当に嬉しいです」とほほ笑みながら、さまざまな思い出を教えてくれました。

    まち歩きマップやパンフレットなどが並ぶ

    駄菓子屋と一緒に品川宿交流館の仕事も行っています。そのため、観光案内はもちろん、「あのお店がなくなってしまいましたが、今はどこにありますか?」、「こういう方知らないですか?」といった問い合わせも佐藤さんの元に来るそうです。

    定番商品から新しいものまでさまざまな駄菓子が並ぶ

    佐藤さんの最近のお気に入りは、定番の「おにぎりせんべい」(30円)。「おいしいし、小腹がすいたときに2枚入りだからちょうどいいんです。駄菓子は小さい包装のものが多いから、大人でもちょっとしたおやつとして食べられるんです」と理由を教えてくれました。

    40年以上使っているという年季の入った旧式のレジスター

    昭和から時代をずっと見つめてきたレジスターは、銀座にある老舗洋食店「煉瓦亭」と同じものだそう。ただ、一つだけ困ったことが。「これ、足し算しかできないのよ。だから、お釣りの計算は頭でしているの」と笑う佐藤さん。

    「子どもたちにとって、家でもない学校でもない場所、本当の自分を出せる場所になったらいいなと思っています。『ここはオアシスだ』と思ってもらえるお店を目指したいですね」

    旧東海道の歴史に触れながら、品川宿の街歩き。疲れたときはここで一休みしながら、懐かしい駄菓子でエネルギーをチャージするのもおすすめです!

    またあした
    ・住所 東京都品川区北品川2-28-19
    ・電話番号 03-3472-4772
    ・営業時間/定休日 10:00〜16:00/月曜日
    ※月曜が祝日の場合は、月曜営業、火曜休み。

  5. 子どもたちの秘密基地がここにある! 「ミチクサ」(戸越)

  6. 東急池上線戸越銀座駅北口から徒歩約7分、都営浅草線戸越駅から徒歩約5分、平塚中央公園の前にあるのが駄菓子屋「ミチクサ」です。

    品川区は老舗の駄菓子屋が多いものの、「ミチクサ」は2015年にオープン。「両親が駄菓子の卸売業をやっていて、物置として利用していた場所なんです。その後、兄が継いだのですが、その兄も亡くなってしまって。生前、『ここで何かやっていいよ』って言ってくれていたので、『駄菓子屋をやろう』と思いました。私にとっては自然な流れでしたね」と店主の梶原克美さんは話します。

    細長い店内に、壁すら無駄なスペースにしない商品のディスプレイ。どこを見てもずらりと商品が並ぶ様子に思わずびっくりしてしまいます。

    「営業終わりに『どこか改善できるところはないかな?』と探すのが結構楽しいですよ。手に取りやすいように工夫することで、目に見えて結果が出るのも面白いんです」と梶原さん。駄菓子を収納するケースや棚は徐々に揃えていったそう。

    デットスペースになりがちな場所にもオーダーメイドで注文した棚を配置しています。駄菓子ごとに綺麗にケースを分けているのも、梶原さんの試行錯誤の成果です。

    縦長の店内をまっすぐ行くと、突き当たりにドアがあります。そこを開けると、ソファや本棚がある広々としたスペースが!

    後ろに予約がある場合は1時間交代制で利用

    ここで友達と駄菓子を食べたり、お話したり、ゲームをしたり。子どもたちにとって憩いの場であり、秘密基地のような空間となっているようです。

    お店の隣にはフリーマーケットができるスペースが。奥のソファも誰でも利用でき、学校が終わると子どもたちで賑わうんだそう。

    子どもたちの名前を覚えて、訪れるたびに呼びながらコミュニケーションを取る梶原さん。子どもがわいわい集う空間で、綺麗に並んだ駄菓子を堪能してみては?

    「自分でいろいろと試行錯誤してやっているから面白いんです。今後は2店舗目、3店舗目と駄菓子屋をはじめたい人がいたら開業のサポートもできたらと考えています。いい物件があったら教えてくださいね(笑)」とも。今後の展開も楽しみです。

    ミチクサ
    ・住所 東京都品川区平塚2-4-8
    ・電話番号 03-3781-7987
    ・営業時間/定休日 14:00〜17:30(日によって営業時間の変更あり)/不定休

  7. 創業100年以上! 古き良き南品川の駄菓子屋さん 「稲垣商店」

  8. 京浜急行線新馬場駅南口から徒歩約3分、南馬場通りの奥に入った道にある駄菓子屋「稲垣商店」。100年以上前に、店主の稲垣ヒデ子さんの祖父母が創業しました。最初はタバコ屋さんとしてスタートし、戦後になってから駄菓子も取り扱うようになっていきます。

    お店に入ると、「うちのルールはこれね!」と、白い注意書きを指差したのは店主の稲垣さん。稲垣商店では、買うと決めてから商品を手に取るのがルール。

    ちょっと厳しそうに見えますが、子どものころ稲垣商店に通っていた方が大人になってから来店したときに、「おばちゃんのお店では商品決めてから手に取らなきゃいけないんだよね」と懐かしげに話しかけてくれることもあるそう。稲垣さんの愛情のこもった厳しさは、子どもたちにもちゃんと伝わり、いい思い出の一つになっているようです。

    無駄なスペースが無く、ぎゅっと敷き詰められている駄菓子たち。稲垣さんいわく「自分が食べておいしくないと思った商品は置かないと決めています。新しく販売する商品でも、ロングセラーの商品でも売れ続ける理由がありますね」と話します。

    左にある「コカ・コーラ」の自動販売機は、栓抜き付きのレトロなタイプ。珍しいものであるため、あえてこの栓抜きで栓を抜きたくて購入する人も多いそうです。

    駄菓子の「ペペロンチーノ」(70円)は店内でお湯を入れる場合は、お湯代が10円かかるのですが、食べてからお店にカップとフォークとふたを返却すれば10円分の駄菓子を購入できる仕組み。「少しでもリサイクルの精神が養われたらいいなと思って始めました。勝手にゴミを捨てていく人がいなくなるので、とてもいいシステムなんです」と稲垣さん。

    最近はキャンプで食べるのにぴったりという理由で、「ペペロンチーノ」を購入していく大人も多いそうです。

    また、新型コロナウイルスの撃退祈願として、タバコの銀紙で鶴を折り、瓶に貯めているという稲垣さん。「タバコの銀紙はいぶしてあって、かっこいいですよね。この瓶をお客さんが欲しいと言われることもありますが、私の労力がかなりかかっているので売るなら高く売りたいですよ(笑)」とチャーミングに笑う稲垣さん。

    近所の方の日常になくてはならない存在の稲垣商店。愛情を持って、時には厳しく接してくれる店主さんへ、大人になって感謝を伝えに来る人も多いそう。風情ある昔ならではの駄菓子屋さん、体験しに行ってみてはいかが?

    稲垣商店
    ・住所 東京都品川区南品川2-9-11
    ・営業時間/定休日 14:00〜19:00/不定休
    ・電話番号/03-3471-8409

    子どもにとっては夢があふれる場所、大人にとっては懐かしさに浸れる場所。いつの時代も町を見守ってくれる駄菓子屋さんがずっと続いてほしいと願うばかりです。

    童心に帰って純粋に懐かしむ、子どものころできなかった大人買いする……。そんなふうにふらっと駄菓子屋を訪れてみると、心温まる出会いがあるかもしれませんよ。

    ※記事中の店舗情報は2021年10月中旬の内容です。店舗の営業時間、提供内容は変更となる場合がありますのでご了承ください。

    (取材:矢内あや 編集:鬼頭佳代/ノオト)

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    創業100年以上! 古き良き南品川の駄菓子屋さん 「稲垣商店」