撮影カメラマンが選ぶ「もう一度行きたい!品川マイスター店」後編
今回の特集は、品川区在住のカメラマン渡邉茂樹さんによる「もう一度行きたい!品川マイスター店」後編をお届けします。(2020.3.16)
今から10年ほど前のこと、区民の投票などをもとに魅力ある店として選ばれたのが「品川区認定マイスター店」です。この3月にマイスター店を紹介するパンフレットがリニューアルされました。
10年の風雪を耐え抜き、今なお頑張っている100以上のお店を、この冊子のために撮影したのが、私、戸越出身のカメラマン渡邉茂樹です。この特集では私が独断と偏見で選んだ、また行きたい!お店<大井町・旧東海道エリア>をご紹介します。
1. 毎日の食パンと至福のチョコデニッシュ「アンファン」
クリーミーな高級食パンが流行りの昨今ですが、値段と品質のバランスのとれた普段の食パンって大事だなと感じています。我が家でも日ごろお世話になっている「アンファン」の食パンは、ほんのりクリーミーでしっとり、毎日食べていても飽きが来ません。30年この地でパン屋さんを続けて、試行錯誤して来た末の絶妙のバランスです。
そして食パンを買いに行くと、つい目を移してしまうのが菓子パンコーナー。
特徴は種類の多さと、たっぷりボリュームの中身。あんパン、クリームパン、生クリーム満載のエーデルワイス、そして何よりおすすめなのはチョコデニッシュです。
大きめの正方形のデニッシュパンの中に詰まるチョコとチョコフレーク。「ああ、こんなに食べちゃっていいのか」と、罪悪感と快感が入り混じり、口に入れる瞬間がたまりません。ボリュームはあるけど、チョコフレークの歯ごたえが味に変化を持たせ、ペロリと平らげてしまいます。
アンファン 住所:品川区二葉1-16-19 電話:03-3788-0995 営業時間:6:00~18:00 定休日:日、祝日、木曜不定休
2. 大井町名物、なすラーメンが自慢の「金門飯店」
見たことのない商品を見ると、ついつい話題作りかなとタカをくくってしまいがちですが、見事に裏切られたのが「金門飯店」の「なすラーメン」。
見た目はギラッとしていますが、一度食べてみるとしつこすぎず、ツルツルと箸が進みます。このなすラーメン、実はお客さんのリクエストから生まれたもの。ナスとバラ肉のみが具材のラーメンですが、それゆえにちょっとした味への心配りに大きな差が出ます。
一言で言えば、日本人の舌に合うマイルドな味付けなのです。元々アクが少ない九州の長なすを素揚げして、さらにアクをなくします。少し弱めのトロミと、三種類の豆板醤で、食べやすさと味の深みを出します。
こうして出来上がった本品は、ナス嫌いでも食べることのできる人気メニューとして、40年以上看板メニューの座を守り続けています。
今や店舗数の減少により、注目を浴び始めた街の中華料理店。金門飯店もテレビを始め多くの取材を受けています。大井三ツ又で50年以上この店に携わって来た2代目のご主人中山隆一さんには、3代目の息子さんがいます。金門飯店の店の光は当分消えることはなさそうです。
金門飯店 住所:品川区大井1-55-5 電話番号:03-3774-0513 営業時間:11:00~14:00/17:00~21:00 定休日:日
3. 大井三ツ又、海鮮ちらしがオススメの「菜と魚の旬 とき」
今から40年近く前のこと、「時代屋の女房」という映画がありました。ロケ地は大井三ツ又にある実在した古道具屋「時代屋」。映画の中で、主演の夏目雅子が幾度と無く渡った歩道橋は今も健在で、螺旋階段が普通の歩道橋とは違う顔を見せています。
その歩道橋の先の住宅街の中、知らないと見過ごしてしまいそうなマンションの1階に「菜と魚の旬 とき」があります。
板場に立つのは、品川区で修行から現在まで、50年以上過ごしてこられた親方 三枝鉄雄さんと、京都で17年修行ののち戻ってこられた2代目 健次さん。ここのオススメは限定食「海鮮ちらし」(1,500円・税込)です。
季節ごとの旬の魚と野菜、自家製の卵焼きなど、具材の種類もボリュームも豊富なうえにとても美しく盛られています。
日本料理の基本が詰まったお寿司を、手頃な値段でたっぷり食べてほしいという親方と、洗練された美的感覚を磨いてきた2代目、二人が作り上げた共同作品をぜひ味わってみてください。
菜と魚の旬 とき 住所:品川区大井4-7-10 野田ビル1F 電話番号:03-3778-0077 営業時間:12:00~14:00/18:00~21:00 定休日:火、水
4. パンとコーヒーの美味しい店、立会川「カフェ ロティ」
立会川駅の周辺はなぜ心地良いのか。暗渠から出てきた立会川が、太陽のもとにようやくその本来の姿を現します。そして、駅前の狭い商店街と並行して旧東海道をくぐり、海へと向います。歩く人間にちょうど良いスケール感です。「カフェ ロティ」はこの立会川駅のすぐ横に立っています。
高級ベーカリーに勝るとも劣らないパンの品質の高さなのに、明るい庶民的な雰囲気。地元の人々に愛されていることが、お客さんの表情から感じられます。
私がオススメするのは、ゴーダチーズベーコン。
天然塩とオリーブオイルを使って作ったオリジナル生地は、柔らかくもっちりした歯ごたえ。ひとくちかじると、チーズとベーコンのジューシーさとブラックペッパーの香りが口の中にひろがります。
できれば2階のカフェスペースへどうぞ。気取りすぎないインテリアと路地の風景が、心を和ませてくれます。このスペースでは、コーヒー教室や落語など様々なイベントも行われており、地元の人々の交流の起点となっています。
カフェ ロティ 住所:品川区東大井2-23-2 電話番号:03-3768-4324 営業時間:6:30~19:30(土は17:00まで) 日祝 8:00~14:00 定休日:不定休 https://www.facebook.com/cafelotty/
5. ドリンク代プラス150円で驚きのモーニングメニュー「カフェ ムジカ」
一度は行ってみたいけど中々行く機会がなかった店、それが「カフェ ムジカ」です。若くからコーヒーの修行をし、バイオリンも弾いていた先代が、この地にお店を構えたのは、昭和55年。今も昭和の喫茶店そのままの姿で、青物横丁駅と向かい合っています。
先代のこだわりを受け継いだ2代目のご主人、村上泰範さんも各国の最高品質のコーヒーを数多く取り揃え、豆によって淹れ方を変えています。
ここでおすすめしたいのが、11:00まで限定のモーニングサービスセットです。
内容の充実度と価格の設定が素晴らしい。私が選んだBセットは、飲み物代プラス150円でバターロールサンド2つとサラダ、そしてフルーツがついてきます。サンドの中身は日替わりなのでその日のお楽しみ。
座る場所は入り口すぐの年季の入ったカウンターがいいでしょう。黒光りしたカウンターに手をおき、目の前のサイフォンを眺めます。外からの光がほのかに当たるサンドと一緒にコーヒーを飲めば、一日の始まりを気分よく始められるに違いありません。
カフェ ムジカ 住所:品川区南品川2-4-1 電話:03-3474-7213 営業時間: 平日 7:30~21:00 土 8:00~18:00 日・祝11:00~18:00 いずれもL.O.30分前 定休日:日・祝日不定休 http://www.cafe-musica.jp
6. 夜から開く秘密の喫茶店「ごいた喫茶マーブル」
「ごいた」ってなに?それは能登の漁師たちが漁に出られないときなどに行なっていた将棋ゴマを使った伝統遊戯です。
昼間であればシャッターが閉まり、通り過ぎてしまう間口、ここ「ごいた喫茶マーブル」はあたりが暗くなってきた18時から開店します。
一歩店内に入ると、時間の流れが、ゆっくりになります。奥へと続く壁面の棚には、マンガとボードゲームの数々が並び、店の雰囲気は、昔ながらの純喫茶。
オススメの料理は「オムライス」(1,000円・税込)です。
フワフワのオムレツに包まれたチーズ入りポークケチャップライスは私の期待通り。何で早く教えてくれなかったの?と言いたくなるテッパンメニューです。家族や友人と来て、オムライスを食べてボードゲームを楽しむことはもちろん、一人で訪れてマンガ読みながらオムライスもいいなあなんて妄想してしまいました。
ちなみにお料理上手の現在の店主篠塚順子さんは、ご両親からお店を受け継ぎ、純喫茶の雰囲気はそのままに現在の営業形態にされたそうです。
通常営業の平日はテーブル、食事ともに前日までの予約制ですが、それに見合うだけの、楽しくて美味しい時間を提供してくれます。週末は「ごいた」を始め、様々なボードゲームイベントを食事付きで開催しています。
ごいた喫茶マーブル 住所:品川区南品川5-9-19 電話:03-3472-1809 営業時間:18:00~22:00 定休日:月、土、日、祝日(週末はイベント開催の場合もあり) http://www.hos.to/cafe-marble/
いかがでしたか?昭和テイストに振り切っている感がありますが、楽しんでもらえたでしょうか。区内に住んでいると、近くにあるがゆえに、あまり行く機会も動機もなく、よく知らない店って多いなと感じていました。 今回取材という目的があったからこそ、初対面の客ではなかなか知ることができないことを、お店の方々から教えていただきました。そうしたら、今までとは違う新鮮な目線で街を見ることができたような気がしています。 この特集を通じて、みなさんが「気になる!」と感じるお店に出逢えたら嬉しいです。
渡邉茂樹/フォトグラファー、通訳案内士 「東京人」「プレジデント」などの雑誌や広報誌にて「ひと」、「まち」、「食」の撮影を中心に活動。しながわ観光協会やケーブルテレビ品川などを通じて地元品川区の商店街の人々の撮影も多く行う。戸越小出身、品川区在住。 【写真展】 「戸越銀座の一人一冊」(2014年) 「戸越界隈の一人一冊 with MOP!」(2018年)
▼今回ご紹介した以外にも、魅力あふれるお店が満載! 「SHINAGAWA My Star」デジタルパンフレット
品川区商店連合会「品川区認定マイスター店」プロジェクト詳細はこちら
※掲載内容は、2020.3.10公開時の情報です。