西小山 ひとりでも入りやすい グルメ散歩
東急目黒線・西小山駅周辺は、駅から徒歩5分圏内に多彩な飲食店がぎゅっと集まる、散策にちょうどいいスケールの街です。昔ながらの商店街と個人経営のこだわりのお店が入り混じり、短時間で「はしご」を楽しめるのが魅力。さまざまな飲食店が参加する品川区主催の「にしこやまつり」も毎年10月に開かれます(2025年は10月26日(日)に開催)。食欲の秋を満喫しに西小山へグルメ散歩に出掛けてみませんか。(2025.10.10公開)
1. 西小山民が愛するスパイスカレー「CHIISAKATTA ONNA(小さかった女)」

お昼どきになると、近所の人も遠方からの客も吸い寄せられるように集まる。西小山で長く親しまれているカレー店「CHIISAKATTA ONNA(小さかった女)」。2014年の開業以来、いつしか“スパイスカレーの名店”として名を馳せるようになりましたが「出発点は意外にも洋食寄りのビストロ風メニューでした」と語るのは店主の小助川さん。

カレーへの転換は、ある日知人から受け取ったスパイスがきっかけでした。最初は洋食の延長で「洋風カレー」を作っていたものの、スパイスを試行錯誤するうちに、独自の味わいが生まれていきます。たまたま時期が大阪での「スパイスカレー」ブームと重なっていたため、トレンドを追ったわけではない独創的な味が、結果として東京のスパイスカレー好きを惹きつけることになりました。

店主の小助川さんは芸術系の学校で感性を磨いた経歴をもち、店の内装は電気配線以外ほとんどを自ら手作りしたといいます。木の質感や古道具を取り入れたしつらえには、細部まで行き届いた美意識が感じられ、訪れるたびに少しずつ変化しているのもこの店の楽しみのひとつ。「変化がないと自分が退屈してしまう」と語る小助川さんの言葉どおり、内装もメニューも定期的に手を入れて、常に新しい顔を見せています。

看板メニューの「あいがけカレー(チキン&キーマ)」(1,500円)は、柔らかなチキンの旨味と、肉の凝縮感が楽しめるキーマが一度に味わえる贅沢な一皿。スープ、キャベツのマリネ、ドリンクが付いた満足度の高いセットで、フライドオニオンやカスリメティといったトッピングで風味の変化を楽しめるのもこの店ならでは。
ここ数年でレシピは大きく変化し、かつてはシャープで強めのスパイス感や辛さが前面に出ていたのに対し、現在は「週に一回は食べたい」と思える持続性のあるやさしい味わいを目指しているといいます。

もっと軽く済ませたい日の選択肢として「グリーンサラダライス」(1,150円)もあり、シャキッとした野菜とさっぱりした味付けで、カレーの重さが気になるときにもぴったり。ドリンクはセットで付くので、食後にゆっくりと余韻に浸ることもできます。

店内の手作り感あふれる空間と、常に変化するメニュー構成は、何度来ても新しい発見を与えてくれます。スパイスの刺激だけではない、食べ続けられるやさしさを備えた一皿を求める人に、ぜひ足を運んでほしい店です。
CHIISAKATTA ONNA(小さかった女) | |
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住所 | 〒142-0062 東京都品川区小山5-25-14 カーサファイブ 1階 |
電話番号 | 03-6887-2292 |
営業時間 | 昼の部:11:30-15:00/夜の部:17:00-20:00 |
定休日 | 定休日:月(不定休のため営業カレンダーはInstagramをご確認ください) |
https://www.instagram.com/chiisakattaonna/ |
2. 心地よい空気と自家焙煎豆の香りが流れる「GLOBE COFFEE」

オレンジがかった柔らかな灯りに誘われて扉を押したくなるコーヒー店「GLOBE COFFEE(グローブコーヒー)」。店内に足を踏み入れると、北欧の木の温もりを感じる家具、時代を経たヴィンテージ食器がゆったりとした間合いで並び、都会の喧騒を忘れさせてくれます。迎えてくれるのは柔和な物腰の店主・増本さん。初めての人でも自然と会話が弾む、居心地のいい空気が漂っています。


店の奥に置かれたフジローヤルの焙煎機は、この店の核。所狭しと積まれた麻袋からは、世界各地の生豆の可能性が匂い立ちます。増本さんは「生豆の調達に力を入れています」と語ります。LCF(リーディングコーヒーファミリー)に所属することで、多様で質の高い豆を安定して仕入れられることに加え、焙煎や抽出に関する最新の知見を学び続けられるのが大きな強みだそうです。

コーヒーメニューは、オリジナルブレンドとシングルオリジンを合わせておよそ10種前後。店頭とオンラインで豆売りを行っています。イートインでは、一杯ずつ丁寧にハンドドリップで提供しています。


それぞれ絵柄の異なるカップもこの店の魅力。増本さんが選んだARABIA(アラビア)のヴィンテージカップに注がれた「マンダリン」は、芯のある深い苦味とコク、スパイスを感じさせる余韻が同居する一杯。滑らかな舌触りの自家製チーズケーキと合わせると、コーヒーの持つ複雑さがより引き立ちます。
ケーキは季節ごとに入れ替わる限定品も多く、コーヒーと調和するよう工夫しているそう。過去に他店でケーキやパン作りを経験したスタッフがアイデアを出してくれることもあり、チームで楽しみながら新しいメニューを生み出しています。

増本さんは言います。「焙煎技術の向上に終わりはないため、今後も学び続けてさらに磨きをかけ、より良いコーヒーを提供したいです。今後の展望としては、取り扱う生豆の種類を増やし、世界各地の魅力的なコーヒーをお客様にご紹介したいという思いがあります。」
GLOBE COFFEE(グローブコーヒー) | |
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住所 | 〒142-0062 東京都品川区小山5-25-10 平岡マンション1B |
電話番号 | 03-6426-2234 |
営業時間 | 10:00〜19:00(カフェは18:00まで/L.O. 17:40) |
定休日 | 定休日:火 |
URL | http://globecoffee.tokyo/ |
https://www.instagram.com/globecoffee/ |
3. まっすぐでやさしい味わいの焼菓子店「cuisson Lucca」

先ほどの GLOBE COFFEE の隣にひっそりと佇む、フランス菓子の香りが届く小さな焼菓子店「cuisson Lucca(キュイソン ルカ)」。店主の野澤さんはかつてサラリーマンをしていたという異色の経歴の持ち主で、脱サラ後に製菓の世界へ踏み出しました。

選んだ学びの場はル・コルドン・ブルー。フランス菓子専門だからではなく、「現場で早く役立つ技術を短期で学びたかった」と短期集中コースを選んだのだそうです。結果的にクラスでは男性は野澤さんただ一人、周りはマダムたち。フランス語がほとんどの講師に囲まれ、フランス郷土菓子や高度なレシピを次々と学ぶ過程で、フランス菓子の奥深さと美しさに魅せられていきました。

cuisson Luccaの仕事哲学はとにかく「焼きたてをそのまま届けること」。修行時代に見た効率重視の大量生産—冷凍して少しずつ解凍・販売するやり方—を目にしたとき、「焼きたての香りや食感が失われるのは惜しい」と感じたのが原点です。

その思いから保存料を使わず、冷凍せずに必要な分だけをその都度焼いて出す、という方針を貫いています。少量生産は効率が下がるため生菓子との両立は難しいと判断し、結果的に焼菓子に専念する道を選んだといいます。

スペシャリテはガレット・ブルトンヌと、冬季限定のシュトーレン。ガレットは厚みと火入れにこだわりがあり、外側はこんがり香ばしく、中心はわずかに白みの残るギリギリの火加減で仕上げます。そうすることでバターの香りが最大限に引き立ち、口の中でサクサクほろほろに崩れる独特の食感を生み出しています。
シュトーレンは伝統を大切にした手仕事そのもの。10種のナッツとドライフルーツをブランデーに漬け込み、約2か月かけてじっくりと寝かせ、毎日ひっくり返して熟成させます。マジパンを包み、澄ましバターにどっぷり浸してから砂糖をまぶし、さらに2週間寝かせるという手間ひまをかけた一品で、13年目の昨冬は350本以上を売り上げるほどの人気を誇りました(予約は随時受け付け、店頭での前金制)。

店頭のショーケースには、焼菓子のほかにタイミング次第でカットケーキやシフォンケーキが並ぶこともあり、訪れるたびに選ぶ楽しさがあります。また、焼菓子は贈答用のラッピングにも対応しています。
日によっては焼き上がり時間を問い合わせて訪れる常連客も多く、朝一番で並ぶフレッシュな香りを目的に来店する人が絶えません。
cuisson Lucca(キュイソン ルカ) | |
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住所 | 〒142-0062 東京都品川区小山5-25-10 平岡マンション1C |
電話番号 | 03-6421-5535 |
営業時間 | 10:00〜20:00(商品がなくなり次第閉店) |
定休日 | 定休日:日・月 |
URL | http://cuisson-lucca.com/ |
https://www.instagram.com/cuissonlucca/ |
4. おにぎりと歩む若き女性経営者の挑戦「一汁おにぎり 一粒万福」

「一汁おにぎり 一粒万福」がオープンしてから2年が過ぎようとしている。モンゴルに1店舗を構え、11月には台湾での開業が予定されている。日本の“おにぎり文化”を世界に広げようと、オーナーの早川さんは忙しく駆け回っている。だがその歩みは、決して突発的なものではなく、幼少からの習慣、会社員としての経験、そして地元への想いが積み重なって、今のかたちが生まれた。

ピアノ少女だった早川さんは、12歳まで毎日12時間もの練習に打ち込み、今の彼女の仕事につながる「没頭する力」が育まれた。大学を機に上京し、大手製造メーカーへ就職したが、慌ただしい日常の中である日帰省した際に、見慣れた故郷の田んぼを眺めたとき、思わず涙が溢れた。当たり前だと思っていた景色を「守りたい」と想った瞬間だったという。


その感情が起業の原動力となり、早川さんは脱サラを決意。飲食店での修行に身を置き、経験を積む中で、おにぎりにとって最も大切なのはやはり「米」だと考えた彼女は、京都の老舗米問屋・八代目儀兵衛と手を取り合うことを選ぶ。単に高品質というだけでなく、米の背景にある生産者の思い、流通のあり方、そして“冷めてもおいしい”というテイクアウト需要に応える品種・ブレンドの追求など向いている方向性が合致した。

店では「一汁(味噌汁)とおにぎりのセット」を基本コンセプトに、日本の家庭料理の温かさを軸に、季節の具材など多数のメニューを展開。単一の具材や2種組み合わせなど、選ぶ楽しさがあり毎日通っても飽きない。ふんわりと握られたおにぎりは、お米の粒をひとつひとつしっかりと感じられる。

もちろん、おにぎりは1個からでも注文可能。テイクアウトや各種フードデリバリー、予約注文にも対応している。

早川さんの行動原理は明快だ。「一度没頭したら、それ以外は見えなくなる」。この姿勢が創業から今に至るまでの原動力であり、5年で30店舗という目標設定にも表れている。今後、目に見えるかたちでどれだけの“万福”が世界へ広がっていくか、目が離せない。
一汁おにぎり 一粒万福 | |
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住所 | 〒142-0062 東京都品川区小山6-6-14 |
電話番号 | 03-6824-7860 |
営業時間 | 8:00〜17:00(店内ラストオーダー16:30)※お米が無くなり次第終了 |
定休日 | なし |
URL | https://ichiryu-manpuku.com/ |
https://www.instagram.com/onigiri_ichiryu_manpuku/ |
5. ペット同伴やベビーカー入店OKの通いたくなるカフェ&ダイニング「AND ONE」

2025年4月に西小山駅から徒歩数分の立地でオープンしたカフェ&ダイニング「AND ONE」。昼はゆったりランチやカフェ、夕方以降はディナーとバータイムを楽しめる、地域に根ざした新しい憩いの場です。

この店の大きな特徴は「ペット同伴可」であること。西小山では珍しい犬連れ歓迎の飲食店で、リードを掛けられる専用フック付きの椅子や、低めのお皿に入った給水サービスなど、ペットがストレスなく過ごせる工夫が随所にあります。常連さん同士で散歩帰りにランチをしたり、在宅ワークの気分転換に愛犬と立ち寄る利用者も多いです。

内装は木目とグリーンを基調にした落ち着いた雰囲気で、窓際の席には自然光が差し込みます。子連れにも優しく、ベビーカーのまま入店できる広めの通路がポイント。フリーWi‑Fiも整っているため、ノートPCでの作業にも適しています。
夜は照明を落とした落ち着いたムードに変わり、最大50名まで対応可能なため、小規模な貸切パーティーや会社の懇親会、誕生日会など多目的に利用できます。

料理はカジュアルなダイニングメニューが中心。ランチではこの日いただいた「キーマカレー」のような、辛さ控えめで野菜の旨味を生かした一皿が人気です。付け合わせのグリル野菜やサラダの彩りもよく、ヘルシー志向の方にも支持されています。

ドリンクは定番のコーヒーや紅茶に加え、季節限定の創作ドリンクの用意も。ブルーの見た目が涼しげな「AND ONE クリームソーダ」は、チョコレートアイスがアクセントになったリッチな味わいで写真映えもします。
アクセスしやすく使い勝手が良いことから、ファミリー層、ペットオーナー、リモートワーカー、夜に集まるグループまで幅広い世代に受け入れられつつある隠れ家的なお店。近隣にお住まいの方はもちろん、散歩や買い物ついでに愛犬と一緒に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。スタッフの温かい接客と居心地の良さが、きっと日常の新しい「寄り道先」になるはずです。
AND ONE(アンドワン) | |
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住所 | 〒142-0062 東京都品川区小山6-10-5 |
電話番号 | 03-6820-6801 |
営業時間 | カフェ:11:00〜18:00/ディナー:18:00〜22:00(日曜日は休み) |
定休日 | 不定休(休業日はInstagramをご確認ください) |
https://www.instagram.com/andone_tokyo/ |
※記事中の店舗情報は2025年9月下旬の内容です。店舗の営業時間、提供内容は変更となる場合がありますのでご了承ください。
編集:株式会社makuri
写真・文:アライミナミ(makuri)