写真家視点「中延」

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荏原中延駅, 中延駅

今回の特集は、品川育ちのフォトグラファー 栃久保誠さんによるフォト散歩です。(2020.2.18)

    こんにちは、フォトグラファーの栃久保です。

    品川育ちの自分ですが、今まであまり歩いたことがなかった中延周辺で、気になる風景や人を撮り歩きました。中延をよく知ってる人が今までと違った視点で町を見れたり、知らない人が中延に興味を持っていただけたら嬉しいです。

    東急池上線「荏原中延駅」

    ある晴れた日のお昼過ぎ、東急池上線の荏原中延駅に降り立った。

    駅を出てすぐのラーメンの名店、多賀野さんには過去2回食べに来たことがある。思わず立ち寄りたくなってしまうが、今回はそんな多賀野さんの行列を横目に駅を出て右方向へと歩いていく。

    写真家視点~中延~

    この日最初にシャッターを切ったのは、目に飛び込んできたカラオケの大きな看板。存在感がすごい。カラオケスナックが2階にあるのか、はたまたそういう名前なのか。

     

    写真家視点~中延~

    歩いてまだ数分だけど、この町は面白そうな匂いがプンプンする。このお店も色々ぶら下がっててなんだか気になるから後で立ち寄ってみよう。

    写真家視点中延

    ヨーロッパを感じさせる住宅を通りすぎると、

     

    写真家視点中延

    お目当のジェンティールさんにランチタイムが終わるギリギリに到着。ジェンティールさんは荏原中延に向かう途中、電車の中で調べておいたお店。

    店内はカウンター席のみ。座っていたおばあちゃんが自分の大きな荷物を見て、座りやすいようにと席を移動してくれた。常連と思しきそのおばあちゃんは終始オーナー夫妻と楽しそうに会話をしていた。

    こういうこだわりのありそうな個人店のオーナーは、少々とっつきにくいものだという先入観を抱きがちだ。だが全くそんなことはなく、気さくにそしてとても丁寧に接してくださる。そんな店内には居心地の良い空気が流れている。

    写真家視点

    頼んだのはキャベツロール。家庭的で素朴な味わいがたまらず、何個でも食べれてしまいそう。

    私:こちらのお店は取材NGだったりしますか? 実はこれから記事を書こうと思っていて。。

    と突然オーナー夫妻に話しかける。自分で取材交渉することは滅多にないので少し緊張する。実際に町を歩いてみて写真が色々撮れたら考えようと思っていたのでこの時点では記事にすることをきちんと決めておらず、完全にいきあたりばったり。ひとしきり客としてランチを楽しんで、記事にするなら絶対に載せたいと思った次第だ。

    まだ記事になるかもわからないんですけど、と弱気の姿勢でいると、

    旦那さん:力になれることがあったら何でも協力するよ

    まさかの神対応でした。

    写真家視点

    あくまで散歩記事なので簡単にお話を伺う。

    私:この町の住み心地はどうですか?

    旦那さん:交通の便が良くて住みやすいよね

    確かに東急池上線「荏原中延駅」、都営浅草線「戸越駅」、大井町線「中延駅」、少し足を延ばせば東急目黒線「武蔵小山駅」と4駅を利用できる立地はどこに出かけるにも便利そうだ。

    お店は今年で29年目に突入で、もはや老舗といっても良いだろう。30周年イベントを何かやるかも?とのこと。ぜひ何かやっていただきたい。そして行きたい。

    本当に記事にすることになったら連絡します、とお店を後にする。

    ここから先はノープランなので、ひとまず来た道を引き返してみる。すぐ隣のお店の奥では店主が何やら作業中で、その光景と店内の雰囲気が絵になるなあと思い、声をかける。

    私:こんにちはーお忙しいところすみません。ここは何屋さんですか?

    店主:さあ何屋さんでしょう?

    と逆に質問で返される。ニコニコ笑顔で親しみやすそうなおっちゃんである。

    写真家視点

    私:練り物屋さん?

    店主:そう、おでん種だね。おでんも売ってるよ

    写真家視点中延

    店頭にはグツグツおでん。食べたすぎる。。が、ジェンティールさんのランチでお腹はいっぱい。

    おっちゃんは練り物についてあれこれと教えてくれる。さつま揚げは高知では酒のつまみとしてよく食べられてるんだよ。はんぺんの形が丸いのは、三角形だと箸でつまんだ時に端の部分が崩れやすいからなんだよ、などなど。

    お店は東京タワー建設と同じ1958年に初代の方が創業され、昭和47年(1972年)に今のご家族で引き継がれたとのこと。

    店主:何、大きいカメラ持ってるけど撮影してるの?

    こちらから記事の話を切り出す前にパスを出してくれたおっちゃん。

    私:そうなんです、散歩記事のようなものを書こうと思っていて、写真とか撮っても大丈夫ですか?

    店主:うんいいよいいよ

    まだ何の記事とも言ってないのに、おおらかなお方です。

    写真家視点中延

    あれこれ話している間に買い物に来ていた女性二人組の常連さんもとても気さくで、中延という町の良さが垣間見えた気がした。

    私:おっちゃん手ごついですね

    店主:仕事してたらこうなっちゃったよ

    先程からおっちゃんの大きい手が気になっていたので、撮らせてもらう。

    写真家視点中延

    職人の手には惹かれるものがある。来る日も来る日もおでん種を作ってきた証。

    実家による用事があったので両親へのお土産用にいくつか購入し、またあてもなく歩き出す。横道も積極的に歩いていく。

    写真家視点中延

    コインランドリーに入っていく人(後にわかるがこのお店のオーナーさん)。

    写真家視点中延

    窓に貼られているメニューがどことなく沖縄を思い出させる。

    写真家視点中延

    一目見たときに違和感を感じるもの、普通とは少し違う光景を見ると写真を撮りたくなる。

    気づくと最初に気になっていた色々ぶら下がっているお店の前。店内は薄暗くまだ開店してなさそうだが恐る恐る覗いてみる。

    写真家視点中延

    店内も置き物がたくさんあり、何とも言えない味わい。写真を撮ってもいいかお願いしてみると、いいよ、と一言。

     

    写真家視点中延

    夜に売る焼き鳥の仕込み中だそう。お邪魔してすみません。

    写真家視点中延

    私:隣でランドリーもされてるんですか?

    オーナー:そうだよ

    私:写真撮ってもいいですか?

    オーナー:いいよ

    写真家視点中延

    これが隣のランドリー。

    写真家視点中延

    一台稼働中。

    別世界に紛れたような不思議な感覚。そうだ、おっちゃんの写真も撮っておきたい。お店に戻りカメラ目線をお願いすると嫌な顔せず応えてくれました。

    写真家視点中延

    ありがとうございます。

    開店時間に伺えなかったので後日調べてみると、とてもリーズナブルに焼き鳥を楽しめて、外国人の方々にも人気の焼き鳥店のようだ。ぜひリベンジしたい。

    そしてまた歩き出す。

    写真家視点中延

    雑多な感じがいい。

    写真家視点中延

    不思議な配管。

    写真家視点中延

    住宅街の昼下がり、多くの人が歩いている。

    写真家視点中延

    なんだかワクワクする道。この辺りは高い建物が少ない印象。

    写真家視点中延

    逆光は被写体の顔が暗くなったりと敬遠されがちだけど、個人的には大好物。

    写真家視点中延

    路地裏も好き。

    写真家視点中延

    黒い店舗。

    写真家視点中延

    工事用のネットが風に舞う。

    写真家視点中延

    食べたい。今の気分は焼き鯖すし塩麹仕立て。

    写真家視点中延

    中延駅前。雰囲気がある。

    写真家視点中延

    外壁とシャッターがおしゃれ。

    写真家視点中延

    鋭角にとがった住宅の敷地。

    写真家視点中延

    アパートへ続く路地。ノスタルジックな気分。

    写真家視点中延

    買い物客で賑わっていたお肉屋さんを横から。今度ここのコロッケを食べてみたい。

    写真家視点中延

    不思議な道のかたち。

    写真家視点中延

    線路沿いに続く道。

    写真家視点中延

    目が合いました。

    写真家視点中延

    今回一番びっくりしたもの、電線の隙間に伸びる大木。

    写真家視点中延

    木の間に電線を通してまでも残されている木。きっと事情があるのだろう。

    写真家視点中延

    とある住宅の外壁に飾られているお花。

    写真家視点中延

    とある町工場の郵便受け。

    写真家視点中延

    水色にペイントされた木造の壁。

    写真家視点中延

    線路沿いを通る遊歩道のような公園。

    写真家視点中延

    水色の壁に映えるポストの赤。

    写真家視点中延

    こんなところでしょうちゃん発見。絵描きの友人、深澤ユリコさんが産みの親です。

    写真家視点中延

    ユリコさんも品川出身。彼女も旅が好きで、お会いするとお互いの旅話に花が咲きます。

    写真家視点中延

    最近会ってないけど元気かなあ。

    写真家視点中延

    陽もだいぶ傾いてきた。冬は太陽の角度が低く西日を長い時間楽しめる。

    写真家視点中延

    陽に照らされてる緑が好きです。

    写真家視点

    階段のところに人に立ってもらったら面白い絵が撮れそう。

    写真家視点

    整然と並ぶ水道メーター。

    写真家視点中延

    ほのぼのした光景。子供たちがとても楽しそうで、それを見ているおじちゃんも嬉しそう。

    写真家視点

    おっフライパン探してたんだよなーとよくよく見てみると、最近妻がテレビで見たと言っていたお店だった。よし、ここでフライパンを買おう。

    店内を物色していると、作業をしていた代表の小宮山さんが話しかけてくれた。フライパ  ンのあれこれを聞いていると不意に

    小宮山さん:フライパンで作った目玉焼き食べてみます?

    ぜひ、と二つ返事でご馳走になる。

    写真家視点中延

    鉄のフライパンは始めに湯気が出るまでよく熱するのがコツ。

    写真家視点中延

    小宮山さん流目玉焼きは差し水は無し。

    写真家視点中延

    外側のカリカリが命とのこと。確かにこんなに美味しいカリカリは初めてだ。

    写真家視点中延

    ケース内でくつろぐリクガメの梅ちゃん。最初はケースから出て店内をのびのび散歩していたが、無音で移動して気付くと足元にいるので蹴飛ばされないか心配。

    写真家視点中延

    小宮山さんとは年がひとつ違い。私が通っていた高校の隣の小学校の出身らしい。世間は狭い。

    自分の写真を記事に載せるのは絶対嫌だときっぱり言われてしまったけど、帰り際フライパンを購入した際、

    私:じゃあこれで掲載OKということで(ニヤリ)

    小宮山さん:断れないじゃん

    と快諾いただいたので載せさせてもらってます。

    写真家視点中延

    色々話して、お客さんに本当に良い道具を使ってもらいたい、という強い想いが伝わってきた。

     

    写真家視点中延

    購入したのと同じ型のフライパン。家で料理をするのがより楽しくなりました。

    写真家視点中延

    小宮山さんとお話してたらいつの間にか陽も落ちていた。

    中延は夜の灯りも魅惑的。今度は夜も散策してはしご酒などしてみたい。

     

    【今回お世話になったお店】

    ジェンティール(ドイツ料理)
    ・住所 東京都品川区中延1-8-16(Googleマップで見る
    ・電話番号 03-3782-0101
    ・営業時間 11:30~13:30、17:00~24:00(L.O.23:30)

    丸佐かまぼこ店(おでん種)
    ・住所 東京都品川区中延1-8-15(Googleマップで見る 
    ・電話番号 03-3785-2399
    ・営業時間 10:00~19:00 /日曜定休

    鳥忠商店(焼き鳥、ランドリー)
    ・住所 東京都品川区中延2-6-23(Googleマップで見る
    ・電話番号 03-3782-5438
    ・営業時間 18:00~21:00 /不定休

    九雲(料理道具)
    ・住所 東京都品川区東中延2-1-19(Googleマップで見る
    ・電話番号 03-6426-8481
    ・営業時間 11:00~20:00

    ※掲載内容は、2020.2.18公開時の情報です。

    【著者プロフィール】
    栃久保誠
    フォトグラファー、ビデオグラファー、日本茶カフェ「茶箱」共同オーナー。
    1982年生まれ、品川育ち。明治学院大学卒。某アパレルメーカー店長を経て退職後、1年8ヶ月で38ヶ国を巡り、帰国後フリーランスの写真家として活動開始。
    地元品川を始め、全国各地で様々なジャンルの写真撮影、映像制作に携わる。
    www.tochikubomakoto.com

    マップ
    東急池上線「荏原中延駅」