フォトグラファー渡邉茂樹「しながわ鉄道100景」後編

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品川駅, 目黒駅, 大崎駅

今回の特集は、前編に引き続き品川区在住のカメラマン渡邉茂樹さんによる「しながわ鉄道100景」後編をお届けします。(2021.3.3公開、2022.5.23更新)

  1. 「新幹線と横須賀線」品川区内を貫く万里の長城

  2. 鉄道100景 権現山公園から観る新幹線

    JRの線路が大きく二手に分かれる権現山公園から今回の旅を始めます。

    鉄道100景 東海寺大山墓地と新幹線

    東海道線と別れた新幹線は、東海寺大山墓地の真横を通り、横須賀線と一緒になって区内を抜けて行きます。

    鉄道100景 南三ツ木架道橋下
    鉄道100景 横須賀線第一戸越ガードと築堤

    築堤の上を横須賀線が走り、さらにその上の高架を新幹線が走る風景は、自然の地形と相まってこのエリア特有の景観を生み出します。第一回の冒頭に、「鉄道は等高線である」と述べましたが、それを一番正確に体現しているのがこの2線です。

    鉄道100景 下神明の三重立体交差

    この沿線の中でハイライトとも言えるのが、下神明駅周辺の風景です。上下に南北に走る2線は、下神明駅で東西に走る大井町線と交差します。

    鉄道100景 旧蛇窪信号場分岐

    そこからすぐ近くの旧蛇窪信号場で、横須賀線は大崎支線と合流します。広い埋立地では水平方向に広がっていた鉄道土木が、ここでは垂直方向に展開し、自然地形はもちろん、鉄道土木をよりダイナミックに感じることのできる場所となっています。

  3. 「東急池上線」 つかの間の登山鉄道気分

  4. 鉄道100景 池上線五反田駅

    下神明駅から大井町線に乗り、西へ進むと池上線が現れます。池上線では五反田駅から戸越銀座駅までの区間で、目まぐるしく変わる地形の高低差を楽しむことができます。ビルの4階の高さにある池上線の五反田駅の高さを、眼下を流れる目黒川がより印象づけます。

    鉄道100景 大崎広小路ガード下

    大崎広小路まで続く高架下の店舗の風景は、鉄道土木と人の営みが重なった姿を見せてくれます。

    鉄道100景 谷山橋から観る池上線

    大崎広小路駅から先、標高はぐっと高くなります。上の写真を撮影した谷山橋を過ぎると池上線は切り通しを進みます。

     

    鉄道100景 桐ヶ谷跨線橋と池上線

    かつて存在した旧桐ヶ谷駅の上にかかる桐ヶ谷跨線橋では、五反田駅とは反対の位置関係が人と鉄道の間に生まれます。

    鉄道100景 戸越銀座駅

    その後、標高は再び低くなり、車両は人の目線の高さとなって戸越銀座駅に現れるのです。

  5. 「東急目黒線」 地形を横切る青いライン

  6. 鉄道100景 亀の甲橋と目黒線

    品川区の一番西を走るのが目黒線です。今はほとんどが地下化されていますが、地形のうねりの中でときおり息をするように地上に現れます。

    鉄道100景 旧西ノ谷を走る目黒線

    不動前駅と目黒駅の間では、目黒川を渡り、旧名西ノ谷の崖の横を通る姿が、短いがゆえに地形の変化の大きさを印象付けてくれます。

    鉄道100景 不動前緑道(目黒線跡)

    一方、かつて線路が走っていた地上は、そのころの記憶を止めるかのように美しい緑道になっています。

     

  7. 「山手線と湘南新宿ライン」 すれ違っても2線は仲良し

  8. 鉄道100景 長者丸踏切

    JR目黒駅は品川区にあります。そこから北上する山手線と湘南新宿ラインは、かつて長者丸と呼ばれた高台の中の切り通しを進みます。長者丸踏切では湘南新宿ラインと山手線が交差します。地形の高低差と、土木的構造物を両方楽しめる場所です。

     

    品川100景 花房山と湘南新宿ライン

    ここからは、線路を目黒、五反田、大崎へと戻るように進みます。長者丸から始まり花房山と続く高台は、次第にその高度を下げ、花房山通りの中間で、鉄道とその位置関係を逆転させます。等高線としての鉄道を強く感じる場所です。

    鉄道100景 五反田駅

    山手線は目黒駅では切り通しの下にありますが、次の五反田駅では築堤の上で周囲を見渡しています。

     

    鉄道100景 目黒川と山手線

    その後、目黒川を越えて今や一大ターミナル駅となった大崎駅に向かいます。

    鉄道100景 大崎駅と夢さん橋夕景
  9. 「大崎支線」 カーブを描き続けるかつての貨物線

  10. 鉄道100景 区役所通りから見る湘南新宿ライン

    大崎駅から先、山手線と湘南新宿ラインは二手に分かれます。横浜へと向かう湘南新宿ラインが通る大崎支線は、元々貨物用の線路です。総合車両センターの敷地に沿ってカーブを描き、旧蛇窪信号場で横須賀線と合流します。区役所通りから大崎支線を眺めると、この線路のカーブは車両基地建設のために掘削された権現台の崖へと続くように見えます。

    鉄道100景 苗木原踏切としながわ中央公園

    その後、湘南新宿ラインは旧地名が残る権現台踏切、苗木原踏切を越えて築堤の上を通り、横須賀線と合流するのです。

    鉄道100景 大崎支線と相鉄線

    2019年秋にJRとの相互乗り入れを開始したエレガントなネイビーブルーの車体の相鉄線も品川の街の風景にすっかり馴染んでいます。

    いかがでしたか?この記事では主に鉄道と地形に焦点を当てながら、区内の鉄道をご紹介させていただきました。実際に地形を楽しむには、その場に行って散策するのが一番です。
    この記事が身の回りの風景を楽しむきっかけになれば嬉しいです。

    3月5日(金)~17日(水)まで戸越銀座フォトカノンで開催される写真展「しながわ鉄道100景 -鉄道から地形と土木と人の営みを旅する」にもよろしければ足をお運びください。
    最後まで読んでくださりありがとうございました。

    <取材・撮影・執筆>
    渡邉茂樹/フォトグラファー、通訳案内士
    「東京人」「プレジデント」などの雑誌や広報誌にて「ひと」、「まち」、「食」の撮影を中心に活動。しながわ観光協会やケーブルテレビ品川などを通じて地元品川区の商店街の人々の撮影も多く行う。戸越小出身、品川区在住。
    【写真展】
    「しながわ鉄道100景」
    2022年6月10日(金)~22日(水)戸越銀座フォトカノンにて(2021年の作品の再展示となります)

    これまでの写真展:
    「品川用水の面影」(2022年)
    「しながわ鉄道100景」(2021年)
    「戸越銀座の一人一冊」(2014年)
    「戸越界隈の一人一冊 with MOP!」(2018年)

    ※掲載内容は、2021.3.3公開時の情報です。

    マップ
    「新幹線と横須賀線」品川区内を貫く万里の長城
    「東急池上線」 つかの間の登山鉄道気分
    「東急目黒線」 地形を横切る青いライン
    「山手線と湘南新宿ライン」 すれ違っても2線は仲良し
    「大崎支線」 カーブを描き続けるかつての貨物線