新しくなった品川歴史館に行ってみよう
品川区の貴重な歴史的資料や展示物が集まる品川歴史館。実は、大規模な改修を経て2024年4月にリニューアルオープンしたことをご存知でしょうか?
今回はリニューアルしたての品川歴史館の見どころを、学芸員の方にご紹介いただきました。映像や模型をふんだんに使った最新のミュージアムは、子どもから大人までだれもが楽しめる場所になっています。夏休みの自由研究にもぴったりです。タイムスリップした気持ちで、品川の歴史をたどっていきましょう! (2024.7.5)
*「品川×大田 旧東海道でつながるまち WAKUWAKU ラリー ~大森編~」の品川歴史館でのクイズのヒントは当記事の末尾に掲載しております。
1. 初の大型リニューアルで生まれ変わった品川歴史館
池上通り沿いにある品川歴史館は、JR大森駅から徒歩10分、大井町駅から徒歩15分。
大森駅、大井町駅からは東急バスでいずれも「鹿島神社前」、西大井駅からは品川区コミュニティバス「しなバス」で「品川歴史館北」で下車すると、歴史館までは徒歩1分です。
1985年に郷土資料の保存や活用、教育普及などを目的として、安田財閥である安田善助の邸宅跡地に設立。初の全面改修を経て2024年4月にリニューアルオープンしました。
今回は学芸員の冨川武史さんに、品川歴史館をすみずみまで案内してもらいます。冨川さんはリニューアルの計画から深く関わってきたそう。学芸員の目線からこだわりをお伺いできるのが楽しみです!
ちなみに、看板をはじめ施設のあちこちに見られる山型のアイコンは品川歴史館の新しいロゴマークです。歴史館の三角屋根をイメージした山型を組み合わせて、品川の「品」を表しているんだとか。外観の壁をよーく見ると、ロゴを使ったピクトグラムのような絵もありました。品川歴史館の前を通るときは、「隠れロゴ探し」にも挑戦してみてください!
2. 13分間で品川の歴史を振り返る! 大迫力の映像「品川歴史絵巻」
「まずは2階からどうぞ」と通されたのは展望デッキ。常設展示室を上から一望できる場所となっています。
ここでは展示室上部に設置されている巨大スクリーンに注目しましょう。13分間の映像「品川歴史絵巻」が上映中でした。
「品川歴史絵巻」で描かれるのは、縄文時代から現代まで、15の印象的なシーン。それぞれの時代の子どもたちの視点から描かれています。最初から答えを出すのではなく、いろいろと想像してもらうため映像にセリフや文字は入れていないとのことですが、影絵のようなタッチのアニメーションは分かりやすく、子どもや外国人の方でも理解しやすそうです。
「品川歴史絵巻」は1時間に3回、繰り返し上映されています。毎時5分、25分、45分からスタートするので、時間を狙って観てみてはいかがでしょうか。
3. 大型模型やタッチパネルで品川の歴史を知ろう! 常設展示室
続いて、メインである1階の常設展示室(観覧料:一般100円、小中学生50円)を周りましょう。
展示室を一周すれば、原始古代から近現代まで時代に沿って品川の歴史を学ぶことができます。各時代のトピックを模型や映像で分かりやすく見せる「ライブステージ」と、解説パネルとともに歴史資料が並ぶ「ライブウォール」の2構成。専門家でも小学生でも、見ごたえのある展示を実現しています。
初めて来た私は、「ライブステージ」を中心に見学しました!
常設展示室の作りについて、冨川さんにお話を聞いて驚いたのは、だれもが展示を楽しめるよう、随所に工夫がされていること。施設のリニューアルにあたっては車いすの方や弱視の方に来館してもらい、お話を聞きながら空間デザインを調整していったそうです。たしかに、色覚障害のある方でも見やすいパネルや、車いすに座った状態でも押しやすいボタン位置など、随所に工夫がありました。
常設展示室は見どころがありすぎてこの記事に入り切りませんので、私が個人的に気になった展示をピックアップしてご紹介します。
こちらは縄文時代の模型。品川区は「大森貝塚」が発見された場所として有名です。教科書で見たことがある人もいるかもしれません。
模型内手前、地面が白くなっている場所が貝塚なのですが、よくよく目をこらすと……
縄文人が貝を捨てています! 小指の第一関節程度の小ささなのに、肌や服が綺麗に塗り分けられていて驚きました。
ほかの模型にも当時の人々がたくさん登場します。それぞれの立場や役割などに注目して、どんなシーンか想像しながらじっくり眺めてみましょう。
江戸時代の東京湾を紹介するパネルには、「御台場」の文字がありました。「あれ?お台場って現在の港区では?」と思いましたが、あのあたりは建造当時「品川沖」と呼ばれていて、今の東品川を起点に造られたので「品川台場」という名前になったんだそうです。
「幕府が定めた正式名称は『内海御台場』、つまり江戸湾の内海にある御台場という意味です。しかし、遠く伊豆半島の石材をはじめ遠くから資材を運ぶ船にとって、『内海』は広すぎて不明瞭。古くから東海道品川宿などで知られる『品川』の名を冠することで、どこに運ぶのか分かりやすくしていたのでしょうね」と冨川さんは話します。当時から品川は知名度が高い場所だったことが伺えます。
台場建造シーンの模型は、横から見ると断面が表現されていました! 石垣の重さによる地盤沈下を防ぐ木の杭が海中に刺さっている様子が見えます。冨川さんに教えてもらわなければ見落してしまうところでした……。みなさん、模型を見る際は前からも横からも覗いてみてください。意外な発見があるかもしれません。
展示室に入る際は、受付でもらったQRコードをゲートでかざしましょう。空港みたいでワクワクしますよ。
有料で見学できるのは、常設展示室と特別展示室の2つ。特別展示室では特別展や企画展を年に開催します。展示開催期間外はお休みですのでご注意ください。それにしても、100円でこのボリューム、すごすぎますね……!
4. 航空地図やライブラリ、品川をもっとよく知るための 4つのコーナー
2階にある無料エリアの「しながわナビ」は、品川に住んでいる人や、ゆかりのある人にぜひ立ち寄ってほしい場所。5つの地区(品川・大崎・大井・荏原・八潮)の歴史や観光について学べます。
床には高精細な品川区の航空写真(2022年当時)が貼られています。あなたの家、通勤している会社、お子さんの学校なども見つけられるかもしれません。
「長年品川区に住んでいても、品川歴史館のことを知らない人って結構いるんですよね。今回のリニューアルでは、もっと地元の人に来館してもらうために地域に寄り添った展示をしようと、新設したのが『しながわナビ』でした。自分の住む地域の歴史について知りたいと思ったときは、気軽に足を運んでほしいです」と冨川さんは想いを語ってくれました。
しながわナビの奥にあるのがライブラリーです。品川歴史館がもつ2万冊の蔵書のうち、約9,000冊をいつでも読むことができます(貸出はできません)。品川区の郷土資料を中心に、周辺地域の資料、歴史・地理・社会に関する本をそろえます。
ライブラリーに併設しているのはモースコーナー。大森貝塚を発見・調査したモースの書斎をイメージしたフリースペースです。シックで高級感のある空間のなか、モースになった気分で調べものができるかもしれません。
1階の「ライブラボ」は、休憩で利用できるほかワークショップなどの会場になります。子どもたちが学校の体験学習で訪れる際は、ずらっと展示されている昔の道具に実際に触れてもらうそうです(普段は道具に触ることはできません)。
大きな窓からは庭園が一望できます。緑を感じながらのびのびと学習できそうですね。
「以前は全体的にもう少し暗い施設でした。リニューアル後は木目調の床や大きな窓、白い壁などで全体的に明るくなったと思います」(冨川さん)
5. 敷地内の日本庭園には、昭和初期に造られた茶室「松滴庵」も
最後に、ライブラボから見えていた美しい庭園に向かいました。開館時はいつでも立ち寄ることが可能です。
庭園内にあるのが「松滴庵(しょうてきあん)」。昭和2~3年ごろに建てられた茶室です。普段は茶室内への立ち入りができませんが、月に1回一般公開日を予定しているほか、茶道などの伝統文化活動において利用することも可能です。
今回は特別に茶室内を見せてもらいました! 昭和初期から、この場所でさまざまな人々が向かい合い、お茶を楽しんでいたのかもしれません。
柱ひとつとってもさまざまな木材が使われていて、松滴庵を建てた安田善助のこだわりを感じることができる場所でした。
6. 新しい品川歴史館で品川をもっと身近に感じよう!
品川歴史館を見学して感じたのは、「品川の歴史を知れば、日本の歴史も解像度高く見えてくる」ということ。縄文時代の大森貝塚に始まり、東海道の宿場「品川宿」として全国に知られるようになった品川には、「品川御台場」や「初めて鉄道が開通した品川駅(停車場)」といった歴史上のキーポイントがたくさんありました。
品川区に住んでいる人も住んでいない人も、品川歴史館に来れば「コレ知ってる!」「教科書で読んだ○○は品川と関係があったんだ!」などの発見がきっとあるはず。映像やタッチパネルを活かした体験型の展示で、楽しくもっと身近に、品川の歴史を学んでみませんか?
品川歴史館
・住所 〒140-0014 東京都品川区大井6-11-1 ・電話番号 03-3777-4060 ・開館時間 9:00~17:00(入館は16:30まで) ・定休日 月曜日(祝日の場合は開館し、次の平日に休館) 、年末年始、臨時休館日 ・入館料 一般=100 円、小中学生 =50 円 ※品川区立・区内在住の小中学生、70歳以上の方、障害のある方は無料 ※特別展開催時は別料金になります。 ※団体割引に関しては公式HPよりご確認ください。
・URL https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/jigyo/06/historyhp/hsindex.html
※記事中の施設情報は2024年6月中旬の内容です。施設の開館時間、展示内容は変更となる場合がありますのでご了承ください。
(取材:安光あずみ 編集:森夏紀/ノオト)
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