旧東海道の面影が残る街、新馬場~北品川を散策
「品川」と聞いて、どんな風景を思い浮かべるでしょうか。オフィスビルが並ぶビジネス街、山手線新駅など、どこか新しいまちというイメージがあるのでは……?
新幹線やJR、複数路線が発着する巨大ターミナル「品川」駅から南に10分も歩けば、昔ながらの下町の風景が見えてきます。かつて東海道五十三次の一の宿・品川宿があったこのエリアには、いまもなお古民家や寺社が多く残っています。
今回の特集は、品川宿。新しいものと古いものが混ざり合う品川宿の魅力を探しに、まち歩きに出かけましょう。「ゲストハウス品川宿」でディレクターを務める和田紀子さんに案内役をお願いし、おすすめのスポットを教えていただきました。(2018.05.18)
1. 品川神社のミニ富士山に登ろう
京急線新馬場駅から徒歩3分の「品川神社」。まずは、こちらに参拝してからまち歩きに出かけましょう。品川神社の創建者は源頼朝と伝わり、徳川家康が関ヶ原の合戦の際に先勝を祈願して以降、徳川歴代将軍より庇護を受けた歴史と格式ある神社です。
和田さんのおすすめは階段を上っていく途中、左手に現れる「品川富士」。高さ約15mという都内最大級の富士塚で、富士登山と同じご利益が授かるそうです。さっそく登ってみましょう。
登山途中には1~9合目の札があり、本物の富士山さながら……と思いきや、あっという間に頂上に到着!
第一京浜を走る車や京浜急行の路線が目前に広がります。かつてはここから品川の海や富士山が見えたんだとか。
境内には浅間神社があり、本物の富士山さながら。その近くには旅行安全を祈願するかわいいカエルの石像もあります。境内ではカエルのイラストが描かれたお守りも販売しているので、参拝帰りにぜひチェックしてみてください。
境内には他にも宝物殿や神楽殿、金運のパワースポットとして人気の阿那稲荷神社などがあります。
品川神社 品川区北品川3-7-15 03-3474-5575
2. お座敷で名物「品川宿そば」を食べよう そば処 いってつ
続いて品川宿でおすすめの飲食店を教えてもらいました。
2013年にオープンした「そば処 いってつ」。看板メニューはかつて品川の海で採れていたあさりと海苔がふんだんに乗った「品川宿そば」です。つゆは食欲をそそるピリ辛風味。食べ進めたら、添えられている生卵を汁に入れ、味の緩急を楽しむのがオススメなんだそう。
和田さんお気に入りは、スパイスをたくさん使った「ピリ辛のカレーそば」。やみつきになること間違いなしです。
そば処 いってつ 品川区北品川1-30-23 03-3471-3842
3. おいしいコーヒーと本を楽しもう「KAIDO books&coffee」
「KAIDO books&coffee(カイドー ブックスアンドコーヒー)」は「品川の街を盛り上げたい」という店主・佐藤亮太さんの想いが形となり2015年に開店。
「おいしいコーヒーと本、最高の組み合わせが楽しめる場所です」と和田さん。街道にまつわる本がコレクションされていて、本棚に並んでいる本のタイトルを眺めるだけで、旅行気分が味わえるのだとか。
店のイチオシはトマトベースにキノコがのったピザ。サクサクした食感と軽い食べ応えが特徴です。
KAIDO books & coffee 品川区北品川2-3-7丸屋ビル1F 03-6433-0906
4. 明治時代の一軒家「レンタルスペース松本」をのぞいてみると……
続いて訪れたのは、新馬場駅すぐ近くにある「レンタルスペース松本」。明治時代に建てられた一軒家です。
大正時代には「松本酒店」として営業し、戦後にモツ煮込みが名物の居酒屋「松本屋」に。そして一昨年、1987年の閉店から約30年間も空き店舗だったこの一軒家が、レンタルスペースとして生まれ変わりました。
建物の中に広がるレトロな空間。壁に「北馬場」と書かれた看板がありました。新馬場駅は、もともと北馬場と南馬場、2つの駅が統合してできた駅。オーナーがこの看板をずっと大事に持っていて、ここにディスプレーすることになったとのこと。
現在は平日お昼にお弁当を販売したり、落語会を開催したりと、地域の人々のコミュニケーションの場にもなっています。個人でも1時間1,800円、6時間1万円でスペースの貸し切りがOK。独特の風情を楽しみながら、ゆったりした時間を過ごせそうです。
レンタルスペース松本 品川区北品川2-19-4 03-6712-8020 営業時間 9:00~21:00
5. 「パリスマドンナ」(古着屋)で、お気に入りの一品を探す
華やかな黄色の外観が特徴の「パリスマドンナ」。和田さんは、仕事帰りに店主のえみさんに会いによく訪れるそうです。「えみさんは北品川のファッションリーダー。センスのいい小物と洋服がそろっていて、とってもわくわくします」(和田さん)
店内には洋服やバッグ、帽子、靴などの小物やアクセサリーが並びます。商品を仕入れる基準は「ほかのお店には並ばない個性的なもの」。一般的に洋服店は仕入れ値の3倍の値付けをするそうですが、「パリスマドンナ」では高くても仕入れ値の2倍まで。良いものを安く買える、お財布にやさしいお店なのです。
えみさんは10代の頃から古着が大好きで、当時の夢は自分のお店を持つこと。結局、見事その夢を叶え、恵比寿で店をオープンしました。その後、「地元でお店を開きたい」という思いから、北品川にも店を構えることに。
開店30周年を迎える今年は、セールを行うなど今までにない試みも。「これからも自分が良いと思ったものだけを並べていきます」と、えみさんは笑います。ぜひこちらのお店で、お気に入りの一品を探してみては?
パリスマドンナ 品川区北品川1-29-13 03-3740-4815 営業時間/定休日 12:00~18:00くらい 土曜日曜のどちらかがお休み
6. コワーキングスペース「うなぎのねどこ」で、新しい趣味に挑戦?
2015年7月にオープンした会員制のコワーキングスペース「うなぎのねどこ」も、昔ながらの古民家をリノベーションした物件です。建物が縦に長く、まるで“うなぎのねどこ”のようだ、と地元の人が呼んでいた愛称が、そのまま店名として定着しました。
地元の勉強イベント「ご近所大学」も定期的に開催されていて、金継・いけばな・水彩画・盆栽のレッスンやお茶会などの講座があります。和田さんおすすめの講座は「シュクバカイギ」。和田さんが勤めるゲストハウスのあるスタッフが企画し、毎回いろいろなジャンルの講師を招いて、「どうしたら時間的・空間的な制約に縛られず、『旅人』のような自由な生き方ができるのか」を考え、話し合う機会を提供する会です。老若男女どなたでも参加可能です。
「自分の暮らしや仕事、幸せをクリエイティブする場として活用してほしい」と話すのは、オーナーの田邊寛子さん。誰もが先生として、生徒として、ゆるやかに交流できる場を目指しているそうです。持ち込み企画も大歓迎とのことなので、ぜひ気軽に訪れてみてはいかがでしょう。
うなぎのねどこ 品川区北品川2-30-26 03-6433-0413 営業時間/定休日 なし
7. まちなかに突然井戸?「養願寺」周辺散策記
旧東海道から横丁に入り、散策してみましょう。一心寺の前にある小道を歩いていくと、養願寺が見えてきます。
虚空蔵菩薩を本尊とする養願寺の創建は1299年。東海七福神の布袋さまもお祀りしていて、特にお正月は多くの参拝客でにぎわいます。
「この辺りの路地の雰囲気って、古き良き街並みが残っていて、個人的にすごく好きなんです。ただ路地が複雑なので、何度来ても迷うんですよ」と苦笑いする和田さん。
裏道を歩いていると、今も現役の井戸が現れました。この近辺の路地裏にはいくつかまだ残っているようですが、もう使われていない井戸がほとんどだとか。ぜひ、路地を散策しながら探してみてください。
8. カフェ&雑貨店「La capi(ラ カピ)」でほっと一息
散策に疲れたら、カフェ&雑貨店「La capi」でひと休み。ねむの木とユーカリの葉のトンネルをくぐった2階がお店の入り口です。
この小さなお店は2005年にオープンし、今年で13年目を迎えました。「ナチュラルさ」を大切にした、木のぬくもりが感じられるゆったりとした店内。商品棚には所狭しとオリジナル商品が並び、作家さんの手作り石鹸やノート、ポストカードなども販売されています。
近隣に勤めているビジネスマンや親子連れなど、カフェにはさまざまな人が訪れます。ペットも入店OKなので、お散歩がてら立ち寄るお客さまも少なくありません。不定期ですが、アコースティックライブやワークショップも開催しています。
「店主のサラさんの優しい雰囲気にいつも癒されます」と和田さん。毎年12月になると、ドイツのクリスマスでおなじみのお菓子「シュトーレン」を買っていくのが和田さんの密かな楽しみなんだとか。ついつい長居してしまう、大人の隠れ家です。
La capi 品川区北品川1-30-4 03-3450-8234 営業時間/定休日 11:00~19:00 日曜・祝祭日定休
9. 「ゲストハウス品川宿」に泊まって、品川をもっと楽しむ
「1日では品川の魅力を楽しみつくせない!」という場合は、和田さんが勤務する「ゲストハウス品川宿」に泊まっていきましょう。
旧東海道沿い、北品川駅から徒歩2分、品川駅にも徒歩12分です。ビジネスホテル「清美荘」を改装してオープンしたのが2009年。国内海外問わず、さまざまな場所からお客さんが訪れます。
ゲストハウス品川宿の特徴は「地域貢献型」。宿泊客は、近隣のおいしい飲食店や地元の人だけが知るような場所を教えてもらえるのが魅力の一つです。
部屋は相部屋のドミトリーやシングルルーム、ツインルーム、トリプルルームなどを用意。1階には、ほかの宿泊者と団らんできる共有のリビングスペースもあります。宿泊料金は3,500円から。
またゲストハウス品川宿には、イベントやツアー情報など、品川を中心に観光案内も行う「問屋場(TOIYABA)」があります。どこに行こうか迷ったときには、気軽に相談に立ち寄ってみてください。
ゲストハウス品川宿 品川区北品川1-22-16 03-6712-9440
★旧東海道沿いには他にも「しながわ観光案内所」「品川宿交流館 本宿お休み処」があり、まち歩きマップの配布や品川宿の観光情報を発信しています。
10. 急階段を神輿が上がる!迫力満点、品川神社 例大祭
「もっと品川を楽しみたい!」という方は、ぜひ6月に行われる例大祭に足を運んでみてください。
品川神社では毎年6月7日に近い金・土・日に例大祭が行われます。特に土曜の夕刻、各町の神輿が集結する「各町大人神輿連合渡御」や日曜夕刻の「本社神輿宮入道中」、神社の急階段を担ぎ上げる宮入りは必見です。
11. 勇壮な海中神輿渡御!荏原神社 天王祭
荏原神社では毎年6月上旬の金・土・日に天王祭が行われます。荏原神社 天王祭の見どころは、日曜午前に「素戔鳴尊(すさのうのみこと)」の御神面を付けた神輿が海中で担がれる「御神面神輿海中渡御」。かつては品川宿内の海岸から神輿を海に担ぎ入れていましたが、現在は品川から船に載せお台場海浜公園周辺で実施されています。また、日曜午後の各町大神輿連合渡御は壮観です。
品川神社と荏原神社、2つの例大祭が行われる毎年6月は品川宿がもっとも盛り上がる季節。お祭り当日は、区内外から多くの観光客がまちを訪れます。
品川は古くから人々が行き交う地として、さまざまな文化や風習が今もなお残るまち。品川駅からちょっと足を延ばして、ぜひぐるりと散策してみてはいかがでしょうか。和田さん、ご案内いただきありがとうございました! (記事制作:ノオト)
(2018.05.18公開、2019.5.30更新)