個性が光る、荏原エリアのお散歩スポット

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西小山駅, 戸越銀座駅, 武蔵小山駅

「荏原(えばら)」という地名をご存知ですか?東急池上線の戸越銀座駅・荏原中延駅、東急目黒線の武蔵小山駅・西小山駅といった複数の駅に囲まれている荏原エリア。中原街道や立会道路から路地に入ると、個性あふれる魅力的なお店がたくさん見つかります。

ソフトクリームにクラフトビール、たい焼きなど食べ歩きにぴったりのテイクアウトスポットから、ワインと日用品の店、昔ながらのパン屋さん、クリエイターの集まるギャラリーまで。今回は、荏原エリアの散策におすすめのスポットをご紹介します。(2023.1.20)

  1. ソフトクリームやビール片手に散策へ、カフェスタンド「DUGOUT」

  2. ダグアウト外観
    店の前に置かれたベンチは球場のダッグアウトをイメージ

    2022年6月、中原街道沿いに新たなテイクアウト店が誕生しました。カフェスタンド「DUGOUT(ダグアウト)」は、隣接する立ち食い寿司「ブルペン」が運営する実験的なショップです。

    店名の由来は、野球場の選手控え席。同店で広報などを担当する森学人さんによると、「ブルペンのお客さんにデザートを楽しんでもらえたらと、隣にもう一つ店を作ってみました。メニューや方向性は、あえてしっかり決めていません」とのこと。スタッフのアイデアを実現してみる場として、現在はデザートやドリンク、オリジナルグッズなどを販売しています。

    ソフトクリーム

    スタッフのご実家だというワンツー牧場(北海道)のソフトクリーム(500円)は、すっきりとした甘さながら、ミルクの風味をフレッシュに感じられる逸品!都内で食べられるのはここだけだそう。ソフトクリームを入れたハート型のもなか(300円)も。

    瓶入りのみかんジュース
    ジュースの小瓶には、ポップなラベルが

    「無添加みかんジュース」(小瓶=400円、大瓶=2,000円)は、店主の実家が経営する「こうの果樹園」(愛媛県)のもの。ラインナップは、はるか、なつみ、清見タンゴール、ポンカン、デコひめ、河内晩柑(かうち ばんかん)の最大8種類。

    収穫をぎりぎりまで待ち、まさに食べ頃まで熟したみかんを搾ったジュースは、とろりとした飲み心地。収穫量などにより生産数が決まるため、シーズンごとの数量限定販売です。

    クラフトビール「ブルックリンラガー」

    ドリンクは、クラフトビール「ブルックリンラガー」(800円)を用意。その場で栓を抜いてもらえば、飲み歩きも楽しめます。

    オリジナルグッズのベースボールキャップとTシャツ
    (上段)店名の刺繍入りキャップ、(下段)Tシャツのフロントは胸部分にお店のロゴをプリント

    ブルペン・ダグアウト両店のオリジナルグッズも販売。店名を刺繍したベースボールキャップのほか、バックプリントがユーモラスなTシャツ(以上、各5,000円)はメッシュタイプで、両店のスタッフも着用しています。お寿司のイラストは、オーナーの娘さんが小学生の頃に描いたものだそう。

    わくわくした気持ちを胸にこれから試合に出場しようとする野球選手さながら、DUGOUTでちょっとした散歩のおともを手に入れて、ここから荏原散策をスタートしてみては。

    DUGOUT
    ・住所 〒142-0063 東京都品川区荏原4-6-1
    ・営業時間 11:00〜21:00
    ・定休日 水曜、木曜
    ・URL  https://www.instagram.com/dugout0604/

  3. 一丁焼きで丁寧に作る天然鯛焼き「たいやき と」

  4. 「たいやき と」外観

    「DUGOUT」から西小山方面に向かう路地にある「たいやき と」。住宅街の一角で香ばしい匂いを漂わせています。

    手に持ったたいやき

    麻布十番の名店「浪花家総本店」で修業した店主・長谷川大祐さんが作る鯛焼きは、近年では珍しい「一丁焼き」と呼ばれる製法で一匹一匹丁寧に焼き上げられた「天然もの」。パリッとした薄皮で、軽い食べ心地が特徴です。

    「たいやき と」店内

    定番メニューの「つぶあん」(200円)は、十勝の池田町産あずきと種子島産粗糖を使ってやさしい味に仕上げています。つぶあんが苦手だけど「と」のたい焼きは食べられる、というお客さんもいるのだとか。

    子どもに人気の高い「カスタード」(200円)は、ねっとりと食べごたえのあるカスタードクリームがあふれんばかりに詰まっていて、一口食べるだけでふんわりとした甘みが口いっぱいに広がります。さらに、もちもちした食感が絶妙な「白玉入りつぶあん」(250円)や月ごとに変わる季節の鯛焼き(300円)も。

    お皿に乗ったたいやきとドリンクのセット
    たいやきドリンクセット

    イラストレーターでもある長谷川さんがデザインしたキャラクター「townくん」をあしらったグラスも好評で、寒い日でも冷たいドリンクを頼む人が多いそう。好きな鯛焼き1つとドリンクのセットは500円。

    「たいやき と」店内のカウンター席

    店内ではコーヒーやお茶はもちろん、お昼からお酒も飲めるんです。鯛焼きが焼き上がるまでの待ち時間にサクッと一杯、なんてことも。店員の久保田さんは「2人ともお酒が好きだったので、甘い鯛焼きをつまみにお酒を飲む場を作りたかった」と話します。

    「たいやき と」看板

    お散歩の途中に立ち寄って休憩するのもよし、テイクアウトして食べ歩きをするのもよし。お散歩のお供に、甘い鯛焼きを買ってみてはいかがでしょうか。

    たいやき と
    ・住所 〒142-0063 品川区荏原6-6-8
    ・電話番号 070-9036-0871
    ・営業時間 11:00〜19:00
    ・定休日 日曜、月曜、火曜
    ・URL https://www.instagram.com/taiyaki___to/

  5. 喫茶に食事に日用品販売、マルチに楽しめる「Kirin Store」

  6. 「キリンストア」外観

    中原街道を旗の台方面に進むと見えてくる「Kirin Store(キリンストア)」は、丸い看板に描かれた可愛いキリンのイラストが目印です。店頭には「日用品&ワイン喫茶」の文字。

    同店は喫茶や食事だけでなく、食器などの日用品やワインの販売、編集事務所などマルチな顔を持ち、お客さんによって多種多様な楽しみ方ができる不思議なお店です。

    「キリンストア」店内

    「ジャンルを決めず、さまざまな国の料理をご提供しています。シャンパンとホッピーが共存するようなお店にしたい」と話すのは、店主の田村亮さん。

    今イチオシのメニューは「フランス産骨付き鴨のコンフィ+クレソンとわさび菜のサラダ」(2,400円)。低温の油でお肉をじっくり煮たフランス料理です。しっかりとお肉の味が感じられる鴨肉と、ピリッと辛味の効いた葉物サラダがよく合います。

    ワインが入ったグラスとお皿に乗った肉料理
    「フランス産骨付き鴨のコンフィ+クレソンとわさび菜のサラダ」

    鴨肉は、西中延に日本法人を構えるフランスの輸入会社「ファイユ・ジャパン」が輸入するものを使っているそう。田村さんは「骨の近くのお肉は特にうまみがあるので、最後はかぶりついて食べてみてください」と話します。

    一緒にいただいたワインは、同じくフランス産のオレンジワイン「レ・サリケア トルリト2020」(グラス=1,200円)です。2022年秋に初開催された地元イベント「あつまれ!えばら」で知り合ったという、目黒のフランスワイン輸入会社「ヴァン・ドゥ・ミディ」から仕入れています。オレンジワインとは、赤ワインの製法で白ぶどうを醸造したもの。鴨肉に負けない、うまみがありながらも、ほどよく感じられる酸味が鴨肉の脂をさっぱりとさせてくれるので、ついつい食事の手が止まらなくなります。

    ワインが入ったグラスとワインボトル
    「レ・サリケア トルリト2020」

    店内にあるワインショップ「キリンセラー」では、常時200種類以上の自然派ワインが購入できます。ボトルワイン代にプラスして1本につき1,000円、グラス代200円で角打ちもできるので、気になるワインはお料理とともに店内で味わえます。

    また、食事スペースの周りには、食器を中心とした日用品がずらりと並んでいます。アンティーク食器も取り扱っていますが、どれもリーズナブルな価格。編集者の顔も持つ田村さんが編集長を務めるリトルプレス「Kirin Diary」も見逃せません。

    食器などが並べられた棚

    「自家焙煎のコーヒーや中国茶から、ワイン、クラフトビール、日本酒やホッピーまでそろえています。Wi-Fiも電源もあるので、パソコン作業などにもお使いください。もちろん日用品やワインを買うだけのご利用も大歓迎。この店の楽しみ方は人それぞれなので、色々なシチュエーションで来店してほしい」と田村さん。

    店主の男性が雑誌を持って写っている
    店主の田村亮さん

    お散歩の休憩がてらにふらっと立ち寄れば、きっと新しい発見があるはず。さまざまな角度から自分だけの楽しみ方を見つけてみてください。

    Kirin store
    ・住所 〒142-0064 東京都品川区旗の台1-1-14 大沼ビル1F
    ・電話番号 03-6426-7554
    ・営業時間 15:00-20:30ラストオーダー
    ・定休日 不定休
    ・URL http://www.kirinstore.com/kirinstore/Store.html

  7. 荏原で働く人々を支えて50年、みんなの思い出のパン「ミヤガワベーカリー」

  8. 「ミヤガワベーカリー」外観

    東急目黒線・西小山駅から徒歩8分ほど、住宅街に佇む「ミヤガワベーカリー」。1972年に創業した同店は、このエリアを長く見守ってきた存在です。

    「ミヤガワベーカリー」店主の夫婦
    店主の宮川章さん(右)と宮川光子さん

    「店を始めた頃、このあたりは金属や印刷なんかの小さな町工場がたくさんあった。みんな夜遅くまで働いていたね」と教えてくれたのは、店主の宮川章さん。荏原エリアで働く人を支える存在として、当時は早朝から夜遅くまで店を開けていたといいます。

    ショーケースに並んだサンドイッチなどのパン

    パン店に出入りする問屋の社員から一念発起し、独立開業してパンの作り手にまわった章さん。働き盛りな荏原の人々のお腹を満たすため、まずはサンドイッチから作り始めたそう。現在も、ショーケースには約20種類のサンドイッチや惣菜パンが並んでいます。

    「近くに幼稚園があったから、忙しい親御さんに頼まれると、子ども用のお弁当箱にサンドイッチを詰めて渡していたの」と話すのは、妻の宮川光子さん。当時のお子さんが大人になり、「あの時の味」を求めて来店することもあるそうです。

    ベンチの上に置かれた4つのパン
    (左上から時計回りに)「ウインナフライ」「ベーコントマトピザ」「チョコリング」「こしアンパン」

    溶岩窯で焼き上げる同店のパンは、香ばしくふっくら仕上がるのが特徴だそう。魚肉ソーセージ入りの「ウインナフライ」(150円)は、ほんのりカレー風味。石窯焼きの「ベーコントマトピザ」(300円)は窯焼きならではの食感がうれしい一品です。カラフルでお子さんが喜びそうな「チョコリング」(110円)や、昔ながらの「こしアンパン」(130円)も。

    このほか、食パン(一斤=270円〜)は、米粉を使ったものやレーズン入りなど数種類を用意。チョコチップクッキー(130円)やアップルパイ(200円)などのおやつもそろえます。

    テーブルに置かれたシフォンケーキ
    ブルーベリーのシフォンケーキ

    30年ほど前、「せっかくいい窯があるし、作ってみたら?」という声をきっかけに取り組んだというシフォンケーキ(1ホール=700円)は、ファンの多い人気メニュー。味は紅茶やプレーンのほか、オレンジ、ラムレーズン、ブルーベリー、キャラメルなど、全17種類! 店頭に並ぶ味は日替わりで、売り切れることもしばしば。

    保存料を使わないため、販売時期は夏の暑い時期を避けて例年9月〜5月ごろ。事前の予約注文も受け付けます。

    「ミヤガワベーカリー」看板

    昔は多かったという近隣の商店が少しずつ店を畳むなか、ミヤガワベーカリーを続けてきた理由を章さんに聞くと、「これしか取り柄がなかったからね」と一言。光子さんは「パンには作り手の気持ちが出るものだから、この人のパンはやさしい味がしますよ」と笑います。

    「もう年だし、小売には厳しい時代だから、店をいつまで続けるかわからないな」と話しながらも、パン作りの手はとめず取材に応じてくださった章さん。地域の人の生活を支えてきたミヤガワベーカリーの味を、このエリアに新しく訪れる方もきっと気に入るはずです。

    ミヤガワベーカリー
    ・住所 〒142-0063 東京都品川区荏原5丁目9-10
    ・電話 03-3786-5189
    ・営業時間 7:00〜19:00
    ・定休日 月曜・火曜

  9. 自由気ままなギャラリースペース「same gallery」

  10. 「セイムギャラリー」外観

    2020年3月にオープンした「same gallery」(セイムギャラリー)。中原街道と立会道路を結ぶ通り沿い、「DUGOUT」や「たい焼き と」からもほど近くにあります。

    古い町工場をリノベーションしたスペース。1階はアートギャラリーとして、ユニークな展示やイベントを不定期で開催しています。一方の2階は、運営メンバーの仕事場として使われているとのこと。

    「セイムギャラリー」入口に立つ運営者の男性

    「自分たちの仕事場兼、みんなで集まれる場所を作りたかったんです」と話すのは、運営者の長谷川踏太さん。この物件を見つけたときに「1階はギャラリーにできそう」と思いついたそうです。

    運営メンバーには、ロンドンのクリエイティブ集団「TOMATO」唯一の日本人メンバーでありアーティストの長谷川さんをはじめ、フォトグラファーの嶌村吉祥丸さん、同じ通り沿いにあるユニークなリサイクルショップ「Hand To Mouth」の店主である廣永尚彦さんのほか、ライターや編集者などさまざまな業種で同じ趣向を持つ人たちが集まっています。

    「家賃の高い青山や原宿に部屋を借りると、そこでビジネスをする必要が出てきてしまいます。商売の場を作りたかったわけではないので、無理に頑張らなくても運営ができる荏原エリアを選んだんです」と長谷川さん。ギャラリーの開催頻度は特に決まっておらず、やりたい人がいたら展示を開くスタイルです。

    壁に展示されたアート作品を鑑賞する人々

    オープニングイベントとして開催した「bring your own art party」では、それぞれが持っているアート作品を持ち寄り、ギャラリー内に自由に飾って楽しむという独創的な企画を行いました。日本では「飾る場所がなく、家に飾っても自分しか見ないからアートを買わない」と考える人が多いことから、自分の持っているアートを多くの人に見てもらえるような場を思いついたのだそう。

    長谷川さんは「展覧会にゆかりのない人やインドに住んでいた人など、総勢100人ほど来場してくれました」と当時の様子を振り返ります。「大々的に告知したわけではなかったのですが、この時点でかなり人の広がりが感じられました」とも。

    会場内に設置されたアート作品を鑑賞する人々

    2020年の7月には、「盗めるアート展」を開催。さまざまなアートが「盗んで良いもの」として展示される、こちらもユニークな企画です。深夜にもかかわらず多くの人がこの展示に訪れ、大きな反響を呼びました。

    「オープンの10分前くらいから人がたくさん集まり始めて、道にまで溢れてしまったのには驚きました。予想外の出来事だったので大変でしたね。近隣の方たちに申し訳なかったです」と長谷川さん。この展示で同ギャラリーの知名度が上がり、「ここで展示したい」とやってくる人も増えたのだとか。

    偶然にも、このエリアには「Hand To Mouth」のほか、クリエイティブプラットフォーム「konomad」(荏原4)や、リソグラフ印刷のできるDIYスタジオ「Hand Saw Press」(荏原6)など、面白い人たちが集まっているとのこと。

    過去には「Hand To Mouth」や「konomad」とコラボした骨董市「エバラスリフト」を開催。「荏原にはマイペースに好きなことをする、のんびりした人たちが多いような気がしますね」と長谷川さん。

    そんな雰囲気もあってか、地域の人たちがふらっと立ち寄ることも多いと言います。自転車でたまたま通りかかった人が覗いていたり、近所のおじいさんやおばあさんも気になって見に来たりすることも。気軽に立ち寄れる雰囲気が出るというのも、住宅街における良さの一つでもあります。

    イベントに参加する人々の様子を店外から撮った写真
    オープニングイベント「bring your own art party」の様子

    今後はもっと実験的な企画もやっていきたいと話す長谷川さん。「パンデミックの影響がなくなったら、アーティスト・イン・レジデンスとして海外のクリエイターが荏原に滞在し、何か作品を作るというのはどうかなと思っています」と展望を語りました。

    一風変わった展示やイベントを開催している同ギャラリー。ぜひスケジュールをチェックして、一度足を運んでみてください。

    same gallery
    ・住所 〒142-0063 東京都品川区荏原4-6-7
    ・営業時間 不定期
    ・URL https://samegallery.com/

    荏原エリアにある個性的なスポットを5つ紹介しました。ぜひ一度駅から足を伸ばして、のんびりお散歩してみてはいかがでしょうか?

    ※記事中の店舗情報は2022年12月下旬の内容です。店舗の営業時間、提供内容は変更となる場合がありますのでご了承ください。取材当日は撮影時のみマスクを外しています。

    (取材:中込有紀、森夏紀 編集:ノオト)

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    自由気ままなギャラリースペース「same gallery」