旧東海道を散策しながら、東海七福神めぐりを楽しもう
江戸時代から盛んになったといわれる七福神めぐり。幸福の神様として信仰される恵比須・大黒天・毘沙門天・弁財天・福禄寿・寿老人・布袋尊の七福神を祀る寺社をめぐることで加護を受け、福を授かると言い伝えられています。
品川区にも七福神めぐりのコースが2つあります。平成最後のお正月に、旧東海道沿いの「東海七福神」を参拝してみましょう。(2019.01.08公開、2024.12.6更新)
1. 富士塚のある品川神社からスタート!
東海七福神は1932年、品川が大東京市に編入された記念に、東海七福神初詣として定められました。今回は北品川を南下し、ゴールの大森まで約4.5キロメートルのコースを歩きます。

さっそく、東海七福神をめぐってみましょう。京急新馬場駅で降り、品川神社からのスタートです!

長い階段を上ると、社殿が見えてきました。品川神社は1187年、源頼朝が安房国の洲崎明神を勧請したのが始まりといわれています。境内には宝物殿や神楽殿、富士塚や板垣退助の墓、阿那稲荷神社などがあります。

なかでもオススメなのは、富士登山です。富士信仰の遥拝場所として、あるいは実際に富士山への登山ができない人のために作ったといわれています。

目前には、京浜急行の路線が広がります。頂上までは、歩いて3分ほど。新年から気軽に富士山登頂ができちゃいます。

参拝を済ませ、東海七福神めぐり用の色紙を購入。品川神社にはすでに押印されていました。残りは6カ所です。

こちらは、あまりのかわいらしさについつい買ってしまった七福神宝船。土台となる船と各寺社の七福神像を集めると、宝船が完成します。七福神フルセット版も販売されていますが、せっかく七福神めぐりをするので、各寺社をまわってコンプリートを目指すことに。品川神社では、福徳開運の神様として祀られている大黒天のご神像を購入しました。 (現在「七福神宝船」の頒布は行っておりません。2024.12.6追記)
■品川神社 住所 東京都品川区北品川3-7-15 電話番号 03-3474-5575
2. 虚空蔵横丁を通って養願寺へ

北馬場参道通りを歩いて、養願寺に向かいます。

養願寺向かう路地に、煉瓦造りのおしゃれな道を発見。ここは虚空蔵横丁と呼ばれ、映画のロケ地として使われたこともあるそうです。

品川神社から歩いて6分で到着しました。養願寺は、1299年創建の天台宗のお寺。虚空蔵菩薩を本尊とし、4月と11月の第2土曜・日曜の大祭時に開帳されます。

養願寺では、布袋尊を祀っています。千客万来・家運隆盛・家庭円満・商売繁盛などでご利益のある神様です。

約1センチの宝船用の御神像にも、布袋様のトレードマークとも言える袋がありました。この袋の中には、信仰の厚い人に渡す宝物がたくさん入っているのだそうです。
■養願寺 住所 東京都品川区北品川2-3-12 電話番号 03-3471-9224
3. 趣のある庭が素敵な一心寺

養願寺を振り返って正面に見えるのが、次の目的地の一心寺です。

一心寺は真言宗智山派のお寺です。1855年、大老井伊直弼により開山したと伝えられています。

ご本尊は成田山の分身である不動明王。古くから延命と商売繁盛の寺として、信仰を集めています。趣のあるお庭が素敵です。

一心寺では、長寿を授ける神・寿老人が祀られています。ご神像でも、長寿の象徴である鹿を従えていました。にこやかな笑顔を見ると、ほっこりしますね。
■一心寺 住所 東京都品川区北品川2-4-18 電話番号 03-3471-3911
4. 旧東海道の町並みを楽しみながら、荏原神社へ

体が冷えてきたので、一休み。一心寺から見える「KAIDO books & coffee」では、コーヒーなどの通常メニューのほか、お正月特別メニューで甘酒を販売していました。冬に絞ったばかりの澤乃井の酒粕を使った甘酒は、しっかりした味わいで体がポカポカしてきました。
●KAIDO books & coffee 住所 東京都品川区北品川2-3-7丸屋ビル1F 電話番号 03-6433-0906 営業時間:9:00~18:00 定休日 :月、火定休、不定休あり ※年末年始、最新の営業状況は公式SNSよりご確認ください。 Instagram/ X /Facebook
ここからは、旧東海道を南に向かって歩いていきましょう。

品川宿の旧東海道は、今でも江戸時代と同じ道幅なのだそうです。2009年から品川宿周辺の町会・商店街・商店会が協力し、石畳舗装や電線の地中化などを実施。品川宿にふさわしい街並みづくりが行われてきました。

昔ながらの素敵な建物が多くあるのも旧東海道の特徴の一つ。古民家をリノベーションしたコワーキングスペース「うなぎのねどこ」では、店先でだんご汁やホットワインを販売していました。 (※「うなぎのねどこ」は2020年に閉店しました。現在は拠点を持たず品川宿を中心に地方の島などと交流するプラットフォーム「旅するうなぎのねどこ」として展開中。2024.12.6追記)

旧東海道沿いを歩いていくと、目黒川にかかる赤い橋が見えてきました。

次の目的地・荏原神社に到着です。荏原神社は、709年に創立され、現在の社殿は1844年に完成したもの。品川の龍神さまとして、多くの信仰を集めてきました。

荏原神社では、商売繁盛の神様・恵比須を祀っています。荏原神社の恵比須像の後ろにはカンヒザクラが植えられ、毎年1月末から2月にかけては鮮やかなピンク色の桜が参拝者の目を楽しませています。

宝船用の恵比須の御神像は白いお召し物。左手に抱えた鯛が映えますね。
■荏原神社 住所 東京都品川区北品川2-30-28 電話番号 03-3471-3457

さらに南下すること約5分。青物横丁にたどり着きました。この辺りには江戸時代に青物市場があり、青物横丁と呼ばれていたことから、その名称が残っているそうです。
5. 品川区最古のお寺・品川寺、ユニークな七福神も

青物横丁の交差点からすぐ近くにある品川寺に到着しました。こちらは「しながわでら」ではなく、「ほんせんじ」と読みます。806~810年開創と伝えられている、品川区で最も古いお寺。門から入ってすぐ左側には、迫力のある銅像地蔵菩薩坐像があります。

品川寺では祀っているのは毘沙門天。七福神の中で唯一武将の姿をしていて、右手に宝棒、左手に宝塔、足の下に邪鬼天の邪鬼を踏みつけています。

宝船用のご神像も特徴的。ほか7人の神さまに比べると、背が高くてスマートな印象です。顔つきも、どこか精悍な感じがしますね。


さらに境内には、石造りの七福神像もあり、「金成(かのう)七福神」と書かれた立て看板が。こちらで七福神めぐりをする参拝客もいました。恵比須様が鯛を抱えずに持ち上げている姿など、あまり見たことがないポージングがユニークです。
■品川寺 住所 東京都品川区南品川3-5-17 電話番号 03-3474-3495
6. 天祖・諏訪神社で、頭を撫でてご利益を

残る七福神は2カ所。どんどん南に向かって歩いていきます。途中、鮫洲駅近くの勝島運河にやってきました。釣り船などが浮かんでいます。

この堤防は、台風時の高潮や地震の津波によって起こる水害から人々を守るために作られたそうです。ポカポカとした日には、散歩にぴったりの道。春には菜の花や桜、秋にはコスモスが咲き、地元の人たちの散歩コースになっています。

ほどなく立会川駅前の公園で、坂本龍馬の銅像を発見。坂本龍馬が19歳のとき、立会川の土佐藩が築いた浜川砲台で警備に加わったという説があることから、この「20歳の龍馬像」が設置されました。

龍馬像から歩いて5分、天祖・諏訪神社に到着です。天祖・諏訪神社は1965年、天祖神社と諏訪神社が合祀してできました。天祖神社の創建は1100~1190年頃、諏訪神社は江戸時代初期の1631年以前の創建と言い伝えられています。

色紙に押印してもらいました。これで残りは1カ所!

天祖・諏訪神社では福禄寿を祀っています。福禄寿は、幸福(福)と財運(禄)と長寿(寿)をもたらす神様ということで、頭をたっぷり撫でてご利益をいただきました。

宝船のご神像は緑と紫! やはりこの長い頭が特徴的ですね。
■天祖・諏訪神社 住所 東京都品川区南大井1-4-1 電話番号 03-3765-2061
7. 最終目的地・弁天島のある磐井神社へ

最後の磐井神社に向かって、大森海岸駅方面へ。歩いていく途中に、しながわ区民公園がありました。「花とひろばと水と緑の公園」をテーマに、勝島運河を埋め立ててつくった区立公園です。
園内には、しながわ水族館をはじめ、野球場やテニスコート、プール、デイキャンプ場などの施設が備わっています。

園内にある「しながわ水族館」は、お正月から営業開始。小さな親子連れで賑わっていました。2019年の干支にちなみ、館内地下1階の特別水槽では1月14日まで、ウリ坊模様をした魚・ヌノサラシが展示されています。そのほかにもお正月特別バージョンの展示があるので、この機会をお見逃しなく!
●しながわ水族館 https://www.aquarium.gr.jp/ 住所 東京都品川区勝島3-2-1 電話番号 03-3762-3433

公園から5分ほど歩いて、最終目的地・磐井神社に到着しました。磐井神社は、平安時代後期編纂の「延喜式」にも記載されている古社です。

境内の左手の池には弁天島があり、ここに琵琶を持つ弁財天が祀られています。

参拝をして……

押印してもらい……

東海七福神、コンプリートです!
昼ごはんや参拝など含め、所要時間は約5時間。坂道が少なく平坦で歩きやすい道が続いたため、あまり体力に自信がない方でもこのコースなら気軽に挑戦できそうです。

宝船の最後の七福神・弁財天を購入しました。紅一点・赤いお召し物が華やかです。

七福神がそろい、宝船が無事完成! 自ら歩いて作ったものだからこそ、さらに素敵に見えるのかもしれません。縁起物として自宅にちゃんと飾ります。充実したお正月を過ごせたので、来年もまた七福神めぐりにチャレンジしてみます!
■磐井神社 住所 東京都大田区大森北2-20-8 電話番号 03-3761-2931
※東海七福神初詣は、元旦から成人の日までの期間となります。年により異なります。
(2019.01.08)
執筆:松尾奈々絵(ノオト) 撮影:森夏紀(ノオト)